中国メーカーのドローンには、パッケージのロゴが削り取られた、一見すると“正体不明”のチップが搭載されていることも少なくない。だがパッケージだけに頼らず、チップを開封してみると、これまで見えなかったことも見えてくる。中国DJIのドローン「Phantom 4」に搭載されているチップを開封して見えてきたのは、“オールChina”の時代だった。
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前回取り上げた中国DJIのドローン「Phantom 4」の追加情報を掲載する。前回報告したように、Phantom 4には実に78個もの半導体チップが搭載されている(リモートコントローラーを含む)。78個のうち、多くのチップは欧米製あるいは中国製だ。分解しただけでも、おおむねのチップ構成は分かるが、実際には正体不明のチップも少なくない。
図1はPhantom 4に搭載されている、“正体不明”のチップの1例である。Phantom 4に搭載されているチップのうち、おおよそ15%は、パッケージからチップの素性や中身を知ることができない。チップ表面をレーザーで削り取ったもの、マークを刻印していないもの、べったりと樹脂で覆われていて型名を読み取れないものなど、不明な理由はさまざまだ。
2015年以降、このような型名を読み取れないチップが急激に増えてきた。理由はいくつか考えられる。1つは、チップの素性を知られたくないという、最も単純な理由。もう1つはパッケージマークを省くことでコストを削減するというものだ(実際にレーザーマークなどは高いのである)。樹脂固めのチップは防塵(じん)対策や防湿対策などが目的であることが多く、車用のECU(エンジン制御ユニット)や一部のウェアラブル製品にも用いられている技術である。
Phantom 4の“正体不明のチップ”については、実際には1つ目の「チップの素性を知られたくない」が主な理由だと思われる。型名を削り取られたチップの多くは、マイクロコントローラーやマイクロプロセッサである。システムの中核を成すチップばかりが、ネーミングを削り取られている。
このような傾向は中国製品以外でも増えている。多くはシステムや構成を秘匿化したいのだろう。Phantom 4の前機種である「Phantom 3」では、ほとんどのチップを樹脂固めで分厚く覆っていて、チップの素性は、ほぼ分からないようになっていた。
スマートフォンなどでも、パッケージマークを削り取られているチップを時折見かけるが、Qualcomm、MediaTekなどのプラットフォーム支配が多く、これらには堂々とロゴが刻まれている。一部の差別化デバイス(カメラ信号処理やセンサー)に、チップが判別できないような処理が施されている程度である。
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