美濃窯業と産業技術総合研究所は、熱伝導率0.25W/m・K以下で圧縮強度10MPa以上の特性を持つ、1450℃まで使用可能なファイバーレス断熱性材料を開発した。従来材の耐火断熱れんがと同程度の強度を維持したまま、熱伝導率を低減することを実現したという。
美濃窯業と産業技術総合研究所(産総研)は2017年2月13日、熱伝導率0.25W/m・K以下で圧縮強度10MPa以上の特性を持つ、1450℃まで使用可能なRCF(リフラクトリー セラミック ファイバー)を含まないファイバーレス断熱性材料を開発したと発表した。
800℃以上の高温で使用され工業炉の操業中に投入される熱エネルギーのうち、製品加熱に用いられるエネルギーは約30%で、残りは使用されないまま廃棄される。中でも1500℃以上で焼成されるセラミックスの工程は、使用する熱量がわずか数パーセントで、残りの熱量は道具材や炉材への蓄熱や排熱ガスとして廃棄されているという。
特に炉材への蓄熱や、炉壁からの放熱などの断熱材料に起因する廃棄熱量は、全体の約45%を占めている。このような使用されずに廃棄される未利用熱を削減するため、高温で使用可能な高強度、高断熱性材料の開発が望まれている。
産総研は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトにおいて、構造材料研究部門が持つセラミック多孔体作製技術「ゲル化凍結法*)」を用いて、高強度と低熱伝導率を両立した断熱性材料の開発に取り組んできた。
*)ゲル化凍結法:大量の水分を保水できる高分子ゲルに微量のセラミックス粉末を分散させる。これを凍結することでゲル内に細孔源となる氷が形成され、氷結晶を取り除いて焼成し、セラミックス多孔体を作製する手法である。
今回開発に成功した材料は、工業炉用耐火断熱材として用いられている耐火断熱れんがと同程度の強度を維持したまま、熱伝導率を低減することを実現。工業炉の内張り材料として、最内層に適用することが可能だ。廃棄熱量の削減だけでなく、炉材の施工重量を低減できることから、蓄熱による廃棄熱量を大幅に削減可能という。
産総研のリリースによると、開発した技術をもとに作製した断熱材を小型電気炉に施工したところ、耐火断熱れんがと比べ消費電力量を約38%削減できたとする。
美濃窯業と産総研は今後、開発した断熱材料の性能向上と量産化技術の開発を行い、未利用熱の有効活用技術の実現を目指す。性能の目標値は、最高使用温度1500℃以上、熱伝導率0.2W/m・K、圧縮強度20MPaとしている。
なお今回の成果は、2017年2月15〜17日に東京ビッグサイトで開催されている「nano tech 2017 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」のNEDOブースで展示する予定だ。
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