日立国際電気は、広域系Wi-RAN(Wireless Regional Area Network)システム用無線機の基礎開発に成功した。IoT(モノのインターネット)機器からのデータ収集について、従来装置に比べて通信エリアを100倍も広げることが可能になる。
日立国際電気は2017年3月、広域系Wi-RAN(Wireless Regional Area Network)システム用無線機の基礎開発に成功したと発表した。マルチホップ方式により従来装置に比べて通信エリアを100倍も広げることが可能になるという。
今回の無線機は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)主導により、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の原田博司プログラムマネージャ(京都大学大学院情報学研究科教授)が推進する「社会リスクを低減する超ビッグデータプラットフォーム」の一環として、日立国際電気の加藤数衞氏らによる研究グループが開発した。
今回開発した広域系Wi-RANシステム用無線機は、外形寸法が210×90×200mmで、容積は従来製品の5分の1と小型である。重さは3kg以下で従来の4分の1と軽量化した。定格無線出力は1Wである。消費電力も公称70VA以下と小さい。通信方式にOFDM、変調方式に64QAMなどの多値変調を用いた。これによって、最大で約4Mビット/秒のデータ伝送を可能とし、通信エリア内に存在する数千〜数万個のセンサー情報を収集することができる。
また、中継段数が無制限の多段中継(マルチホップ)機能を備えている。開発品は36ホップまでの対応となっているが、原理的には無制限という。これによって通信距離は半径数キロメートル〜数十キロメートルまで拡大することができる。これは、従来の広域系Wi-RANシステム用無線機に比べて100倍のエリアをカバーできることになるという。なお、信号処理用ソフトウェアについては、原田氏が主体となって開発した成果を用いた。
今回の開発品には、基本的な無線通信機能のみを実装している。今後は、ソフトウェア無線技術なども活用していく。これによって、数十台の装置を中継しながら数十キロメートルのエリアをカバーできる方式を検討していく。また、開発した無線装置に1000台のWi-SUN対応機器を接続するための方式検討や伝送試験なども行っていく予定だ。
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