歴代ゼロスクラッチからプロセッサチップを作り、半導体開発からゲーム機を作り上げた任天堂の姿はない。中国Allwinner Technologyのプロセッサ「R16」をそのまま使って作り上げたクラシックミニファミコン(本連載第11回参照)、NVIDIAの汎用プロセッサ「Tegra X1」をデグレードさせて使ったNintendo Switch。これらは、なぜこのような手法で作られたのだろうか。
ゲーム機市場がスマホによって縮小したからか? 岩田さん(=故岩田聡元任天堂社長)を失ったことで任天堂の方針が変わったからなのか? あるいは専用チップをわざわざ作らなくとも市販チップでも十分な性能を作り上げられるほどに市販チップの性能が高いからなのか……。そして、それが最もローコストで速く作れるからなのか。真相は分からない。しかし、開発は最も速い時間で完結することだけは確かだ。市販チップのデグレード品を利用するのが最も速いのである。
ドイツと言えばNVIDIAのTegraとは最も結びつきの強い国の1つである。車向けのTegraではAudiがすでに採用し、2017年に入ってZFやメルセデスもNVIDIAとの提携を発表している。任天堂とは直接関係はないが、自動運転システムやAI(人工知能)にも活用されるNVIDIAチップは強力なソフトウェア開発を必要とする。
NVIDIAは2012年にドイツのユーリヒ総合研究機構に同社GPUが採用され、さまざまな科学解明に活用されていることを発表している。膨大なソフトウェア開発者を必要とするのはゲーム機も同じ。無関係とは言えないかもしれない。
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ルネサス エレクトロニクスや米国のスタートアップなど半導体メーカーにて2015年まで30年間にわたって半導体開発やマーケット活動に従事した。さまざまな応用の中で求められる半導体について、豊富な知見と経験を持っている。現在は、半導体、基板および、それらを搭載する電気製品、工業製品、装置類などの調査・解析、修復・再生などを手掛けるテカナリエの代表取締役兼上席アナリスト。テカナリエは設計コンサルタントや人材育成なども行っている。
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