開発したディスプレイ素子の1画素を取り出した断面構造を図3に示す。
受光・発光層で光をやり取りする。上下の層は受光・発光層に電子を流し込んだり、取り出したりする際に必要な構造だ。
発光部と受光部を市松模様に配置すると、今回のディスプレイ同様の機能を実現できるものの、面積効率が半分になってしまう。1画素で実現できるという点が新しい。効率が良くなるだけでなく、実用化を考えたとき、設計や製造が容易になる。
通常のディスプレイとしての画像を表示する場合、電流は図3の下から上に流れる(電子が上から下に流れる)。受光素子として働くときは逆だ。電流の向きを変えるだけで、発光と受光が切り替わる。
10ms以下で電流の向きを切り替えると、ヒトの目には連続的に発光しているように見えるという。表示を途切れないようにしながら、外部光源を検出できる。
受光・発光層を構成する構造は均一な材料ではない。「ナノロッド」と呼ぶ鉄アレイ状の微細な構造を並べた。図2の背景の右側にナノロッドの集合体が、左側にナノロッド1本の拡大画像が写っている。この部分を図4に拡大して示した。ナノロッド1本の長さは50〜70nm。図4の右側では個々の原子を判別できる。
個々のナノロッドには両端に2つの頭部があり、頭部の中央はセレン化カドミウム(CdSe)、頭部の周辺はセレン化亜鉛(ZnSe)、頭部と頭部をつなぐ棒状の部分は硫化カドミウム(CdS)からなる。
ナノロッドは量子ドット(QD)として動作する。単なる量子ドットとは異なり、頭部と棒部を備えることから、発光と受光の2つの効率を独立に制御できるのだという。
このような新規な構造を採りながら、試作品の輝度は最大8000cd/m2と高い。1000cd/m2で発光した場合の外部量子効率は8.0%。発光効率は30lm/Wである。これは赤色発光有機LEDとしては、最高値に近いという。
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