モバイル機器のカメラインタフェースとして普及している「MIPI CSI-2」の拡張バージョン「MIPI CSI-2 v2.0」が登場した。IoT(モノのインターネット)やAR・VR、車載システムにおける複雑なイメージングのニーズに対応するためだと、MIPIアライアンスは発表している。
携帯電話のカメラをホストプロセッサに接続するために開発された規格が、大きく発展している。モバイルエコシステムにおいて存在感を高めてきたこの規格は、今やモバイルの先へと進みつつあるのだ。
業界団体のMIPI Alliance(MIPIアライアンス)は2017年4月5日(米国時間)、MIPIカメラ・シリアル・インタフェース(CSI)を強化した次世代の「MIPI CSI-2 v2.0」(以下、CSI-2 v2.0)を発表した。同団体によると、この仕様は、IoT(モノのインターネット)、ウェアラブル、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)、ドローン、車載システムで、複雑なイメージングとビジョンのニーズに対応できるようになるという。
EE Timesは最近、Intelのシニアプラットフォームアーキテクトで、MIPIアライアンスのカメラ関連のワークグループでチェアマンを務めるHaran Thanigasalam氏に電話インタビューする機会を得たので、同氏にこの新たな規格について詳細を尋ねた。以下にその抜粋を記載する。
EE Times CSI-2 v2.0を推進しているのは誰か。
Thanigasalam氏 MIPIアライアンスの初期メンバーの多くは、以前はモバイルビジネスに身を置いていたが、現在はIoTや自動車などの新しい分野へ移っている。CSI-2 v2.0の発展を推進しているのはそうした人物たちだ。
EE Times どのような用途によって、カメラやイメージング、ビジョン技術の可能性が広がっているのか。
Thanigasalam氏 幅広いビジョンの用途だと考えている。例えばビデオのストリーミング、イメージセンサー、ADAS(先進運転支援システム)向けセンサーフュージョンなどだ。CSI-2 v2.0の特徴的な機能の一部は、ADASを搭載した自動車に向けられたものだ。
EE Times 自動車に焦点を置いて開発されたCSI-2 v2.0の新機能について教えてほしい。
Thanigasalam氏 5つの機能があるが、そのうち3つは特に自動車にとって重要だ。最も優先したのは、HDR(ハイダイナミックレンジ)とSN比(信号雑音比)の向上だ。
EE Times そうした要素の強化がどのように自動車に影響を及ぼすのか、一例を挙げてほしい。
Thanigasalam氏 典型的な例として、自動車が暗いトンネルを走行した後に外に出て明るい光にさらされた時などだ。旧バージョンでは、RAW-12という色深度を採用していたのに対し、新バージョンではRAW-16およびRAW-20を採用した。このため、HDRとSN比が飛躍的に改善された。
EE Times 自動車に関連して強化された要素は他に何があるか。
Thanigasalam 「遅延低減・伝送効率(LTRE:Latency Reduction and Transport Efficiency)」がある。これは主に2つの目的で開発した。
まずは、車載システムにおける応答時間の要件に対応するためである。CSI-2 v2.0は、ライダー(レーザーレーダー)やソナーで収集する画像データを扱うようになるため、LTREによってリアルタイムの認知や処理を加速できるようになる。
もう1つはイメージセンサーのアグリゲーションだ。CSI-2 v2.0は、ビジョンだけでなくARやVRのアプリケーションにも向けられる。LTREはシステムレベルで遅延を低減し、伝送を最適化して、ケーブルの本数とトグルレートを低減して、消費電力を削減できる。
さらに、スクランブル処理も特長の1つだ。これによって、パワースペクトル密度(PSD)放出を低減し、無線干渉を最低限に抑えることができる。
EE Times 仮想チャンネルも拡張したようだが、これはなぜ重要になるのか。
Thanigasalam システムに、より多くのセンサーが搭載されるようになり、複数のタイプのデータを扱うようになったので、仮想チャンネルが重要になってくると考えている。複数のタイプのデータというのは、例えば、RAWデータだけでなく圧縮されたデータも扱うようになってきているということだ。
CSI-2 v2.0では仮想チャンネルを4から32へと拡張した。これは、とりわけADASのようにセンサーフュージョンを行うような用途において重要だ。
EE Times CSI-2 v2.0に準拠したチップが市場に投入されるのはいつごろになる予定か。
Thanigasalam それは、MIPIアライアンスのメンバーによるだろう。彼らが、製品リリースのタイミングを決める。規格そのものについていえば、だいたい2年のサイクルで新しい仕様をリリースしている。最近は、仕様策定の完了から、それに準拠した製品がリリースされるまでの期間が、短くなってきているように感じる。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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