京セラ子会社の京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は「Interop Tokyo 2017」で、LPWA(Low Power Wide Area)ネットワークの1つである「SIGFOX」のデモを披露した。さらに、SIGFOXのエコシステムパートナーのアイ・サイナップは、KCCSのブースにて、SIGFOXに対応したデバイスやモジュールを展示した。
京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は、千葉県の幕張メッセで開催中の「Interop Tokyo 2017」(2017年6月7〜9日)で、フランスのSIGFOX社が提供するLPWA(Low Power Wide Area)ネットワーク「SIGFOX」のデモを行った。
SIGFOXは、IoT(モノのインターネット)を対象とした低消費電力、長距離通信のネットワークだ。920MHz帯を使用し、100Hzの狭帯域幅を使って通信を行う。通信速度は上り*)で100ビット/秒で、通信距離は最大数十キロメートル。通信容量は1回につき12バイトで、1日140回まで通信できる。
*)日本では法規制によって上り通信しか行えない。
SIGFOX社は、1カ国につき1事業者をネットワークパートナーとして契約し、SIGFOXを提供する形態を採っていて、日本ではKCCSが同社の基地局とクラウドを使って展開していく。KCCSは2017年2月にSIGFOXの提供を開始した。今後は2018年中には主要都市に、2020年中に全国に展開することを目指す。
Interop Tokyo 2017では、会場の温度をセンシングし、収集したデータを一定のタイミングでSIGFOXを使って送信するというデモを行った。
KCCSによれば、SIGFOXへのニーズは、水道メーターの検針や物流などの分野で高まっているという。物流では、例えばGPSで取得したトレーラーの位置を定期的にクラウドに送信するといった用途での需要がある。
KCCSのLPWAソリューション事業部で副事業部長を務める山崎眞吾氏は、約2年前にSIGFOXの技術を知った時に、「つながりやすく、突出した技術だと感じた」と話す。
面白いのはSIGFOXのエコシステムだ。一般的に、通信ネットワークの世界はピラミッド型になっている。最上位にキャリアがあり、その下に端末メーカーや部品メーカー、サービスプロバイダーなどが存在する。だが、SIGFOXのエコシステムは、そのようなピラミッド型ではなく、「輪のようだ」と山崎氏は述べる。ネットワークパートナーも、モジュールやデバイスを開発するパートナーも、全てのパートナーがSIGFOXというエコシステムの中で“共生している”イメージだと同氏は説明した。
なお、KCCSは同日、SIGFOXの普及に向けたセンシングプラットフォームの提供において、アドバンテックと戦略的パートナーシップを提携すると発表した。
SIGFOXのエコシステムパートナーのアイ・サイナップは、SIGFOX通信モジュールを搭載した汎用ユニットや、汎用ユニットを搭載したデバイスの試作品を展示した。汎用ユニットは、SMKや村田製作所のSIGFOX通信モジュールを搭載したもので、ソケットが付いておりGPSユニットやEnOceanユニットなどと簡単に組み合わせることができる。
宅配ピザやパスタを提供する「ナポリの窯 五反田店」(東京都品川区)では現在、ピザ生地を保存する冷蔵庫の温度を、EnOceanとSIGFOXを使ってモニタリングする実証実験を行っている。冷蔵庫の温度をセンシングしてEnOceanで収集し、15分に1回、SIGFOXでクラウドにデータを送信、スマートフォンのアプリでモニタリングしている。この実証実験に、アイ・サイナップのEnOcean+SIGFOXユニットが使われている。同実験でのSIGFOXの回線費用は年額1000円、つまり月額83円である。
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