東北大学の寒川誠二教授らは、独自のバイオテンプレート技術と中性粒子ビーム加工技術を組み合わせることで、損傷が極めて小さい直径5nmの3次元窒化インジウムガリウム/窒化ガリウム(InGaN/GaN)量子ドット(量子ナノディスク構造)を作製することに成功した。
東北大学の寒川誠二教授らは2017年6月、損傷が極めて小さい直径5nmの3次元窒化インジウムガリウム/窒化ガリウム(InGaN/GaN)量子ドット(量子ナノディスク構造)を作製することに成功したと発表した。独自のバイオテンプレート技術と中性粒子ビーム加工技術を組み合わせることで実現した。全波長領域の高効率量子ドットLEDやレーザーの実現に近づく成果とみられている。
今回の研究は、東北大学材料科学高等研究所(AIMR)および、流体科学研究所(IFS)の寒川氏と肥後昭男助教(現在は東京大学大規模集積システム設計教育研究センター)らのグループと、東北大学金属材料研究所の谷川智之講師、北海道大学大学院情報科学研究科の村山明宏教授と高山純一技術職員、北見工業大学の木場隆之助教らによる研究グループが共同で行った。
研究グループは今回、有機金属気相成長装置(MOVPE)を用いてInGaN/GaNのウエハーを作製。このウエハーをバイオテンプレート極限加工法により低損傷の中性粒子ビームでエッチングした。これらの製造プロセスによって、高さ30nm程度のナノピラー構造を作製することに成功した。このナノピラー構造アレイは、量子効果を示す、厚さ2nmで直径5nm程度の量子円盤構造を積層している。無欠陥で均一、高密度(1011?-2以上)に、20nmの等間隔で2次元配置されているという。
さらに研究グループは、量子ドットの発光および発光強度温度依存性について、フォトルミネッセンス法を用いて測定した。この結果、トップダウン加工で作製した量子ナノディスクは、従来の窒化物量子井戸構造に比べて内部量子効率が100倍となることを確認できたという。
今回開発した中性粒子ビームによる加工、表面改質、材料堆積技術は、ナノデバイス製造におけるプロセス損傷を解決することができる。その上、これまで実績のあるプラズマ源を用いるプロセスで、中性化のためのグラファイト製グリットを付加するだけで済むため、極めて実用的な加工プロセスとみられている。
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