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日本は「移動するIoT」をどう考えるべきか? 〜 産業用ドローンへの取り組みJASA発IoT通信(3)(4/4 ページ)

» 2017年08月24日 11時30分 公開
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産業用ドローンの技術的課題とは?

 産業用ドローンの技術的課題を挙げるとキリがない。

 例えば、自動車を例に考えてみる。過疎地の道路やトンネルでは電波がない。その状況下ではドライバーの判断で走行が継続される。地図はナビゲーションの画面に表示され、自車位置もそれなりに把握できている。さてドローンはどうだろう? 無線が途切れてもコントロールできるドライバーは存在しない。ドローン自身が自律して動く必要がある。ITに精通している読者であれば、やるべきことが山積していることは想像できるだろう。

 日本の組込みソフトウェア開発者は、かつて大手家電メーカーやそのパートナーとして秘密保持契約の下、縁の下の力持ち的な存在として活躍してきたし、今でも活躍している。自動車を例にとってみても、ECU(Engine Control UnitないしElectric Control Unit)はエンジン、トランスミッションに限らず、エアコン、ブレーキ、カーエレクトロニクスなど、多岐にわたり制御用プログラミングが搭載されている。その中であらゆる状況を想定しながら、モノづくりをしている。

 ドローンにおけるECUはFCと呼ばれているが、ESC(Electric Speed Controller)でのモーター制御、センサー制御を駆使して飛ぶ。ドローンも自動車と同様で、自動車産業を下支えしている組込みエンジニアが力を結集してけん引すべきであり、その上でサービスが成り立ち、ドローン産業が成り立つのだ。

図9:産業用ドローンのあるべき姿 提供:ドローンワークス株式会社(クリックで拡大)

ドローン産業の行く末

 安価なホビー用ドローンが海外から多く輸入されている状況で、正面から戦っても国内産業界はホビー用では勝てない。日本の産業界が勝てるのは日本の強みを生かした高信頼性プラットフォームと考える。ドローンを安心、安全に運航管理するためには、高性能なセンサー、モーターを使用、制御、冗長化したシステムが必要である。

 冗長化処理を実現するためにはやはり、わが国の産業を自動車と共に下支えしてきた組込みソフトウェアの設計技術である。組込みソフトウェアを1社で作る時代は終わった。それでは世界に勝てない。非競争領域をオープンソースで開発し、今こそ日本の力を結集し日本の産業を作る時だ。

図10:JASAが考える産業用ドローンのサービス階層 出典:JASA資料:http://www.jasa.or.jp/TOP/download/technical/IoTMtoM-2017.pdf

筆者プロフィール

小林 康博(こばやし・やすひろ)/金沢エンジニアリングシステムズ

 金沢エンジニアリングシステムズ入社以来、ECU、ATM(現金自動預け払い機)、デジタル家電など多岐に渡る組込みソフトウェアの開発に従事。「日本の組込みソフトウェア産業を元気にしたい」との想いから、北陸で組込みエンジニアフォーラムを立ち上げ、組込みシステム技術協会(JASA)で活動するようになる。北陸の金沢に活動拠点を置きながら、JASAでIoT技術高度化委員会 ドローンワーキンググループ長として、組込みエンジニアからみた「移動するIoT」のあるべき姿を具現化している。

 金沢エンジニアリングシステムズ 製品企画部 兼 開発部 部長。組込みシステム技術協会 技術本部 IoT技術高度化委員会 副委員長。


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