今回は、これまで取り上げた北米のベンチャー企業のケーススタディーを振り返りつつ、ベンチャー企業の成功はどんな要素に左右されるのか、ということを考えてみたい。
⇒「イノベーションは日本を救うのか 〜シリコンバレー最前線に見るヒント〜」バックナンバー
これまで8回にわたり、北米のベンチャー企業と日本の大手企業の戦略的提携のケースを見てきた。うまくいったもの、いかなかったものなど、さまざまな経緯をたどったが、今回はこれまで取り上げなかった事例も含め、これらのケースにみられる共通点を整理したいと思う。
これまで紹介した事例は基本的に、日本企業がベンチャー企業に資本参加したり、ベンチャー企業から技術ライセンスを受けたり、ベンチャー企業と合弁会社を設立したりすることで、北米のベンチャー企業が生き長らえたものである。とはいえ、それ以外のケースも考慮して振り返ってみると、日本企業との関わり方に関係なく、結局のところ「うまくいく会社はうまくいき」、また「うまくいかない企業はうまくいかない」という1つの結論にたどりつくかと思う。
幾度もお伝えしてきた通り、シリコンバレーではたくさんのスタートアップ企業が花開いているように感じられるかもしれないが、実際は、そうでもない。シリコンバレーでは、スタートアップ企業の95%は5年以内に消えてなくなるというのが実情なのだ。
5年保った会社も、その多くは大きく成長する前に消えてなくなるか、大きく成長しないまま何とか事業を続けているケースがほとんどであり、Apple、Google、Amazon、Facebookのように世界的な成功を収めているスタートアップ企業は、ほんの一握りにも満たないくらいなのである。
シリコンバレーに限らず、スタートアップ企業を数多く見てくると、経営者の資質、経営陣の問題などで破綻をきたす場合もあるが、主に技術や製品開発といった点からすると、典型的な失敗のケースは、次の8つくらいにまとめられるのではないかと思う。
(1)技術が良くてもコスト的に合わないソリューションだった
(2)良い技術だが、製品化には膨大な資金と長い期間が必要で資金的に続かなかった
(3)技術が良くても量産化でつまずいてしまった
(4)良い製品でも業界標準にならず、売り上げが伸びなかった
(5)良いアイデアでも製品化が遅れ、市場機会を逃してしまった(開発計画が楽観的過ぎた)
(6)良い製品を出したが、急速にコモディティ化(陳腐化)し、コスト競争で負けた
(7)技術を売り物にして、ソリューションを売ろうとしなかった
(8)アイデアは良いが、技術的に無理があり製品化に至らなかった
では、1つ1つ具体的に見ていこう。
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