「FPGAaaS(FPGA-as-a-Service:サービスとしてのFPGA)」というコンセプトが登場する中、FPGA業界に関わるメーカーは、フレームワークの構築やパートナーシップの締結などに向けて試行錯誤している。
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FPGAベンダー各社は、新興市場であるFPGAサービス市場の開拓に奮闘している。フランスAccelizeでマーケティング&パートナーシップ部門担当ディレクターを務めるSteáphane Monboisset氏は、「当社は、XilinxとIntelの両社をサポートしている」と述べる。
米国の市場調査会社であるMoor Insights & StrategyでディープラーニングおよびHPC部門担当シニアアナリストを務めるKarl Freund氏は、「Xilinxは既に、AmazonやAlibaba、Baiduなどのクラウドサービスプロバイダー向けに出荷している。Intel(Altera)は若干後れを取っているが、その要因の1つは、同社の14nm FPGA製品がXilinxより遅れていることにある」と指摘している。
同氏は、「ただし、IntelはXilinxに追い付くために、クラウド向けデザインウィンの新規獲得にかなり積極的に取り組むと予想される」と述べている。
米国の市場調査会社である451 Researchの共同創設者であるJohn Abbott氏は、「2017年8月にMicrosoftが発表した機械学習用システム『Brainwave』は、クラウドの低遅延ディープラーニングにIntelのFPGA『Stratix』を使用しているという。クラウドサービス『Microsoft Azure』の顧客にはまだ同サービスを提供していないが、近く開始するとみられる」と話している。
Abbott氏は、「FPGA市場が今後どれくらいの規模に成長するかを予測するのは難しいが、Intelは、2020年までにクラウドプロバイダーの3分の1がFPGAサーバノードをCPUと組み合わせて使用すると確信しているという」と述べている。
クラウド市場のアクセラレーションに関してFPGAとGPUを比較すると、GPUがはるかにリードしている。Abbott氏は、この理由を「GPUはエコシステムが確立されていて、高度な開発ツールを幅広く利用できるからだ」と説明する。
「とはいえ、これらのアクセラレーションフレームワークのいくつかは、FPGAの利用に適している。今後数年にわたって、GPUと同様に、小規模で専門性の高いサービスプロバイダーが垂直市場に特化した形でクラウド市場に参入すると予想される」とAbbott氏は述べている。同氏はその一例として、フランスのクラウド企業であるOVHを挙げた。
Accelizeが、誕生したばかりのサービスとしてのFPGAアクセラレーション市場で地位を確立するには、Intelとの提携が必須だ。
Moor Insights & StrategyのFreund氏は、Accelizeが直面する課題について質問すると、「Accelizeが世界中で急速に事業展開するには、アジアと米国を中心としたパートナーシップの拡充が必要だ」と答えた。
Abbott氏は、「Accelizeは“卵が先か鶏が先か”というジレンマに陥っている」と指摘する。同社は、クラウド市場での市場機会を拡大し、同市場を開発者にとって魅力的なものにするために、クラウド市場を充実させる十分なIP(Intellectual Property)を必要としている。
一方、「Intelには、『Amazon Web Services(AWS)F1インスタンス』に採用され先を行くXilinxに対抗するためにAccelizeが必要だ」とFreund氏は述べている。
AccelizeのMonboisset氏も、Freund氏の見解に同意している。同氏は、「Intelは、当社のような企業との協業によって、大きなチャンスを捉え、大きな責任を果たすことができる」と強調する。Monboisset氏は、「クラウド市場でのFPGAは、クラウドサービスのアクセラレーションを求めるユーザーに対応したコンテンツがほとんどない状態が続けば、暗礁に乗り上げてしまう」と考えている。
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