BroadcomによるQualcommへの買収持ち掛けが続いている。Broadcomは取締役交代をQualcommに提案したが、Qualcommは正式にこれを拒否した。
Qualcommは、Broadcomが提案した取締役11人のメンバー交代を正式に拒否した。今後、半導体業界最大となる両社の合併については、2018年3月6日に開催されるQualcommの年次株主総会で決議されることになる。
Qualcommは断固としてこの取引を拒否しているが、米ウォールストリートのアナリストらは既にこの取引が行われた場合の効果を予想している。Broadcomが2017年12月初めに堅調な四半期報告書を発表したことで、この取引やBroadcomの展望について強気な見方を示している。
Qualcommはプレスリリースの中で、「Broadcomと同社のプライベートエクイティパートナーであるSilver Lakeが提案した取締役会のメンバー交代は、本質的に矛盾していて、Qualcommの取締役会に技術力や専門知識をもたらすものではない」と述べている。また、「Broadcomが最初に提案した1株当たり70米ドルという買収価格は、Qualcommを著しく過小評価している。さらに、規制当局の判断が不確定であるためすぐに実施可能ではなく、取引完了まで1年半かかる可能性もある」している。
Qualcommは米国証券取引委員会(SEC)の提出書類で、アメリカン航空(American Airlines)のチェアマン、元駐中米国大使、元スペイン国務長官、Palo Alto NetworksのCEO(最高経営責任者)を含む9人の社外役員とともに、現在の11人の取締役会メンバーの続行を表明している。QualcommのCEOを務めるSteve Mollenkopf氏と元CEOで取締役会会長を務めるPaul Jacobs氏は、役員を継続するという。
カナダの金融サービス会社であるCanaccord Genuityの財務アナリストが2017年12月7日に公表した文書によると、Broadcomが提案した取締役会のメンバー交代について、Qualcommの株主が納得しない場合、BroadcomはQualcommの買収価格を1株当たり77米ドルに引き上げるとみられる。買収のポジティブシナリオでは一般的に、1株当たり最大100米ドルの5段階で買収価格が提示される。
アナリストらは、この取引にQualcommが現在進めているNXP Semiconductorsの買収も含まれる場合、合併会社は2018年の売上高が560億米ドル、利益が148億米ドルになると予想している。NXPを含めなければ、2018年の連結売上高は460億米ドル、利益は136億米ドルと予想される。
いずれの場合も、2018年に7億5000万米ドル、2019年に15億米ドルのコスト削減が可能だと予想される。Qualcommは、NXPとの取引が承認されれば、5億米ドルのコスト削減を達成できる見通しだ。
BroadcomとAppleの強固な関係を考慮すると、Boadcomの方が、QualcommとAppleの特許係争を、Qualcomm自身よりもタイミングよく解決できるかもしれない。
さらに、Broadcomのスイッチング/ルーティングチップセット事業は、Cisco Systemsを含む主要ベンダーを制して確固たるポジションを確立しているため、QualcommのARMベースの新しいサーバ製品をデータセンター市場に投入する際に重要な足掛かりになると考えられる。
これとは別に、米国の投資銀行であるMorgan Stanleyが2017年12月21日に発表した報告書によると、Broadcomは機械学習向けのASIC事業を新たに開始したという。同事業の売上高は今後2〜3年間で、5億米ドルに達する可能性があるとしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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