Waymoは2017年に、完全に無人の自動運転車の公道走行試験を開始した。
自動車の専門家たちは、Waymoが自動運転車の性能を向上したことについては把握していたが、同社のCEOであるJohn Krafcik氏が2017年11月に、「当社は10月半ばごろから、アリゾナ州の公道で、自動運転車のミニバンの走行試験を行ってきた。安全確保のための人間のドライバーや搭乗者は1人も乗せていない」と発表したことを受け、驚きを隠せなかったようだ。
Waymoは大胆にも、初期段階の乗客プログラムを計画しており、一般の人々を招待して、完全な自動運転車に無料で試乗させる予定だという。アリゾナ州フェニックスの地域住民たちが“実験台”になるのだ。
アリゾナ州は、自動運転車の走行試験を規制する法律が事実上存在しないというまれな州であるという事実も、偶然ではないのだろう。
このようなWaymoの最近の動きから、同社がソフトウェア、ハードウェアの性能向上を実現し、かなりの自信を持っているということがよく分かる。また、同社が有料のフリートサービスの立ち上げに大きな関心を持っており、UberやLyftなどの相乗り(ライドシェア)を手掛ける企業と競争していく考えであることもうかがえる。
Demler氏は、「2017年に学んだ最大の教訓は、『自動運転業界が現在直面している最大の課題は、安全性を示すデモを披露することである』という点だ。技術によって何件の事故を防ぐことができるのかを予測するだけでは、不十分なのだ」と述べる。
2017年中に、公道を走行するロボットカーが関与した事故が、数件発生している。死者は出ておらず、多くは軽度の接触事故だったが、関係当局はほとんどのケースを、「ロボットカーではなく人間のドライバーに落ち度があった」と判断している。
アリゾナ州テンペで2017年3月に発生したUberの自動運転車の衝突事故と、米国ネバダ州ラスベガスで同年11月に発生したNavyaの自動運転シャトルバスの事故でも、いずれもロボットカー側に責任はないとして広く報じられた。
専門家たちはこれらの事故から、事故に関与した自動運転車が“何を行い、何を行わなかったのか”を調査するチャンスを得たといってもよいだろう。
テンペで発生したUber車の事故について、概要を簡単に説明する。
警察の報告書が発表される以前は、左折しようとしていたUberの自動運転車に対して、もう一方の自動車のドライバーが速度を落とさなかったために衝突事故が起きたとされていた。当初、「人間のドライバーの無謀な運転によって発生した事故であり、自動運転モードで走行していたUber車側に責任はない」と結論付けられた。
しかし、後に警察の報告書や目撃証言から、UberのVolvoに衝突した自動車のドライバーが、交差点で左折しようと、低速で前進していたことが明らかになった。無謀な運転も急発進もしていなかったのだ。自動運転モードで走っていたUberのVolvoは、時速40マイルの区間を時速38マイルで走行しており、左折してきた自動車を検知できなかったのである。Uberのドライバーは、交差点に進入する時に信号が黄色に変わったことを覚えているが、UberのVolvoはそれに反応せず、急発進したり走行をためらったりすることもなかったという。
Linley GroupのDemler氏は、「Uber車のこの事故は、日常的な状況で起こった事故だ」としている。同氏は、「この自動運転車は技術的にはルールに従っていたが、リアルタイムに起こる状況に対応した動作を執るべきだった。要するに、UberのVolvoのプログラムは、優秀な人間のドライバーであれば誰もが持っている、“事故を防ぐ運転スキル”が著しく欠けていた」と指摘している。
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