英University of Manchester(マンチェスター大学)は、IoT(モノのインターネット)向けに、グラフェンセンサーを使ったバッテリーレスの湿度モニターを開発した。さまざまなIoT機器向けに、低コストでセンサーを製造する技術に応用できると期待される。
英国のUniversity of Manchester(マンチェスター大学)の研究チームは、RFIDデバイスにグラフェンセンサーを組み込んで、バッテリーレスのスマート湿度モニターを実現した。この湿度モニターは、製造や食品、医療、核廃棄物処理のように繊細な作業が必要な現場で使用するIoT(モノのインターネット)アプリケーション向けに開発された。
同研究に関する論文は、電子ジャーナル「Scientific Reports」に掲載された。研究チームは、グラフェンに酸化グラフェン(GO、グラフェン誘導体)を積層して、フレキシブルなヘテロ構造を形成することで、あらゆるワイヤレスネットワークに接続可能な遠隔監視用の湿度センサーを開発したという。現在試作段階の同デバイスは、受信機から電力を取得するので、バッテリーは不要である。研究チームによると、同センサーは層ごとに印刷できるため、超低コストでスケーラブルな量産を実現できるとする。
チームリーダーのZhirun Hu氏は、「同技術を他の2次元材料と統合することで、ワイヤレスセンシングアプリケーションの新たな展望が開かれる可能性がある」と予想している。
論文によると、同研究では、ギガヘルツ周波数帯のさまざまな湿度条件下でGOの相対誘電率を計測したという。その結果、水分を吸収して湿度が上がると、相対誘電率が増加することが分かった。メガヘルツ以下の周波数帯では、湿度が減少すると相対誘電率が増加するが、ギガヘルツ周波数帯での動作はそれとは異なることが判明した。
研究チームは、酸化グラフェンのこうした電気特性を利用して、バッテリーレスの無線RFID湿度センサーを作製した。具体的には、印刷されたグラフェンアンテナをGO層でコーティングしている。
GOおよびグラフェンアンテナの共鳴周波数と後方散乱相は周囲の湿度に敏感に反応して、RFIDリーダーで検知される。これにより、任意の場所やアイテムに取り付けたデジタルIDで、ワイヤレスに湿度を監視できる。同研究は、IoTアプリケーション向けの低コストで効率的なセンサーの道を開くと期待される。
グラフェンは2004年にマンチェスター大学が発見し、初めて2次元材料として分離された。スチールよりも強く、軽量かつフレキシブルで、銅よりも導電性が高い。グラフェンの発見以降、他の2次元材料も多数開発され、その数は増え続けている。ファンデルワールスヘテロ構造を生成するために、精密に選定した配列に2次元材料を積層することで、特定用途に適合した高性能構造を作り出すことができることが分かっている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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