三菱電機は2018年1月17日、100m程度遠方の物体を早期にカメラで認識できる電子ミラー向けの新たな物体認識技術を開発したと発表した。
三菱電機は2018年1月17日、従来よりも遠方の物体を早期にカメラで認識できる電子ミラー向け物体認識技術を開発したと発表した。これまで30m程度だった最大検出距離を「業界最高性能」(三菱電機)という100m程度まで拡大した。
開発した技術は、自動車のバックミラーやサイドミラーをカメラとモニターで代替する電子ミラー向けの技術。日本では2019年に発売される自動車への搭載が見込まれている。
これまでの電子ミラー向け物体認識技術は、映像中の静止体と移動体の動きの違いに着目して接近物体を検出する仕組みを用いたものが主流だ。しかし、こうした仕組みでは、遠方になるほど、物体の見かけ上の動きが小さくなるため、最大検出距離は30m程度にとどまっていた。
これに対し三菱電機は、人が遠方の物体を認識する際に無意識下で行う「視覚的注意」に着目した独自アルゴリズムによる「視覚認知モデル」を開発。より遠方の物体を高い検出精度で認識することに成功した。視覚的注意とは、視野全体の中から周囲と比較して目立つ領域に優先的に注意を向ける習性で、遠方であっても周囲の背景と分離して着目すべき物体を一瞬で正確に見つけ出すことができる。視覚認知モデルはこれを応用したもので、周囲と比べて見た目や形状が明らかに違う領域を高速で求め、特に目立ち度合いが高い領域を物体として検出するという。これにより、100m遠方の物体でも検出が可能になり「特に高速道での事故防止に重要な接近車両の早期発見に大きな効果を発揮する」(三菱電機)という。
三菱電機は、物体検出に加えて、物体の識別を実現するため、開発した視覚認知モデルを、三菱電機のAI(人工知能)技術「Maisart」に取り入れ、物体の検出、識別を可能にしたという。「低演算量のアルゴリズムで構成された視覚認知モデルと、コンパクトなAIを組み合わせることにより、物体検出から識別までを含む一連の物体認識処理を少ない演算量で実行でき、車載向けの組み込みシステム上でもリアルタイムに動作する」(同社)
今後、三菱電機では、夜間や悪天候、連続するカーブなど多様な走行環境に対応するアルゴリズムへの改良を実施する方針。同時に時系列情報を活用した精度向上などにも取り組み、システムとしての安全性を確保していくとしている。
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