広がり続ける中国半導体の裾野:製品分解で探るアジアの新トレンド(24)(3/3 ページ)
図4は、Webなどで高い評価を集めているJBL製ワイヤレススピーカー「GO」だ。さまざまな筐体色を取りそろえていて使い勝手も良い(ワイヤレススピーカーに多い円筒型ではない箱型なので置いたときの座りもよく、音質も同価格帯では上位)。JBLは有名オーディオメーカーであるHarman Internationalのブランドであり、特にスピーカーでは老舗ブランドだ。なおHarmanは、Samsung Electronics(サムスン電子)に買収されている。
図4:JBL製のBluetoothスピーカー 出典:テカナリエ レポート
JBLのスピーカー製品の中でも最も出荷数量の多いモデルである「GO」には音声処理、Bluetooth通信の統合チップとして中国メーカーであるVIMICROのチップ「WS9623」が使われている。VIMICROのWS9623内には128MHzで動作するCPU、音声処理のためのDSP、オーディオコーデック、電源管理機能、Bluetooth4.1のラジオ機能、加えてデータ保存用の4Mビットのシリアルフラッシュメモリが入っている。開封したチップ上には製造年情報などが記載されるが、VIMICROチップには2015年との記載があり、新しいチップであることが確認できている。2015〜2017年にかけて、中国では多くのチップが設計開発された。これらが2018年以降、ますます実製品に採用され、世に出ていることだろう。
VIMICROは1999年創業の中国では老舗のファブレス半導体メーカーである。2006年には当時の主力チップ製品「星光1号」が出荷数1億個を達成したと報じられている。また同年、ファブレス半導体協会(FSA/現:GSA)の年次表彰で大賞を受賞している。
20年近い歴史を持つVIMICROのような中国チップメーカーもあれば、続々と生まれる新興メーカーもある。今年も中国から目が離せない。
“Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。
百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。
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