とはいえ、現行法であったとしても、ハラスメントで利用可能な法律は、以下のようにたくさんあります。
しかし、このような一般的な法律に基づく手続であったとしても、実際の裁判において最終的な判断を行うのは裁判官です。
裁判官は、自分の知識と経験と主観(×客観)と証拠に基づき、誰からも干渉を受けることなく、「天上天下唯我独尊」的に判決することができます(これを、自由心証主義(民事訴訟法第247条)といいます(参考:著者のブログ))。
では、裁判官は、その自分の「主観」をどのように定めるか ―― これが大変重要になってきます。
基本的には、被害者と加害者が属していた社内規則などが、被告側(または、その弁護士など)から提出されることがありますが、日本の多くの会社では、そのような規則を作っていません*)。
*)ちなみに「男女雇用機会均等法」では、事業主に対して「そのような対応をしろ」と命じていますが、なにしろ、わが国は、残業に関する「36協定」の存在すら知らない会社が、半分を占めている国です(関連記事:「意味不明の「時短」は、“ツンデレ政府”のSOSなのか 」)。
このような場合、裁判官が、事件が発生した時点での社会通念(一般的常識)などを考慮することになるのですが、この社会通念の根拠となるものとして、一般的に権威ある組織によって策定された、公開されている文章(公文章)があります。
省庁の通達(告示等)や、人事院規則(公務員に命じられているルール、という理解で良い)などが、これに該当します。
法律の条文とは異なり、これらの公文章では、「セクハラ」や「マタハラ」の具体的な事例を挙げ、病的なまでに詳細に規定しています。
さらには、そのような場合の紛争解決手段から、加害者への報復・・ではなく、処分までガッチリ記載されています。
つまり、「セクハラ」「マタハラ」そして「パワハラ」を法律で定義することはしていないものの*)、権威あるわが国の行政府では、現時点ではこのように考えている、と民間に「範」を示すことで、わが国全体における職場でのハラスメントの横行を防止する、―― という運用をしているのです。
*)実際のところ、法律の解釈は時代とともに変化していきますが、法律改正は恐しく時間とお金がかかるので、このような運用がされます(公文書以外にも、政令なども)。
ここまでの内容を図でまとめてみます。
しかし、ハラスメントに関する問題解決手段は、当事者間で解決するか、あるいは、他の問題と同様に法に基づき行われることになり ―― つまり、(弁護士とか、相談窓口とか、社内コンライアンスとかがあったとしても)最終的に闘うことを決断するのは被害者であるあなた1人であるということです。
いつか、困っている私を助けてくれる(白馬の王子様みたいな)人が現われる ―― などということは期待してはなりません。
なお、政府の「働き方改革実行計画」の資料にも、「ハラスメント被害者の救済」などという文言は入っていませんでした*)。
*)「働き方改革」の推進の為の法整備について言及があるのみです。
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