スマートスピーカーやスマートライトなどが台頭する中、MediaTekは、クラウドだけでなくエッジにもAI(人工知能)を搭載することを目指すという。
MediaTekは、米国ネバダ州ラスベガスで開催された「CES 2018」(2018年1月9〜12日)で、「ポストスマートフォン時代に向けて、データスイッチ用チップや車載チップ、エッジデバイス向けAIプロセッサといった新しい分野への進出の用意がある」と語った。
MediaTekのCFO(最高財務責任者)を務めるDavid Ku氏は、高度なデータ処理性能の不要な“限定的なAI機能”を、照明のスイッチのような量産デバイスに搭載する計画について説明した。同氏はCESで実施したEE Timesの対面インタビューで、「当社はエッジAIの実現を目指している」と語った。
MediaTekはスマートフォン市場への依存度が高く、同社にとってスマートフォン事業は過去数年間、唯一かつ最大の成長要因だった。だがKu氏は、「2017年の売上高のうち、スマートフォンが占める割合は“40%以下にすぎない”」と述べている。
MediaTekの2017年の売上高のうち、約30%はIoT(モノのインターネット)とASIC/PMIC事業が占めている。Ku氏は、「2017年に20%の成長を遂げたこの2事業は、MediaTekの成長部門だ」と説明している。
さらに、Ku氏が“安定した黒字部門“と呼ぶ、デジタルTVやフィーチャーフォン、モニター、光学記憶装置向けチップが同社の売上高の30%を占める。
MediaTekのIoT事業について尋ねると、Ku氏は、「主な分野は、Wi-FiやBluetoothのような接続チップと、急成長している音声アシスタントデバイス向けのチップだ」と答えた。
MediaTekは、データスイッチの需要も増えると予想しているという。Ku氏によると、同社はデータセンターのデータスイッチ用にカスタム設計したASICを製造しているという。
MediaTekは将来的に、BroadcomやCiscoなどと競合すると予想されるが、Ku氏は、「当社は顧客からの支持を順調に獲得している。大量のデータを生成するユーザーには減速の兆しが見られないため、データスイッチ市場は安定した市場であるといえる」と語った。
Ku氏は、「MediaTekはもはや、スマートフォン市場には依存していない。当社のバランスの取れたポートフォーリオは、投資家からも評価されている」と主張している。
MediaTekは、自動車市場に参入してから日が浅いが、ティア1の顧客企業に4つの製品を提供している。具体的には、テレマティックモジュールとミリ波レーダー、車載インフォテイメント機器、デジタルクラスタの4製品である。
このうち、ミリ波レーダーは特に新しい。MediaTekは、NXP SemiconductorsやTexas Instruments(TI)、Infineon Technologiesなど、CMOSベースのレーダーの開発に成功した半導体ベンダーに対抗する構えだ。
MediaTekの自動車事業担当バイスプレジデントを務めるJC Hsu氏は、EE Timesに対して、「当社のミリ波レーダーは、76G〜81GHz帯で動作し、10〜15m離れた障害物を検知できる。現在使われている超音波装置は、車体との距離がより近い対象物しか検知できないため、ミリ波レーダーは超音波装置に代わる理想的な製品である」と語った。
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