自動運転技術に関連する議論は活発に行われているが、自動運転車と人間が運転する自動車が並走する際の危険性については、あまり議論されていない。人間と機械の“コミュニケーションの不足”について、業界はもっと認識すべきではないだろうか。
「自動運転車とV2V(Vehicle to Vehicle:車車間通信)は、全く別のものだ」とする見方は、段階的な考察に欠けているといえる。再考の必要があるのではないだろうか。
自動運転車の提唱者たちは、路上で事故が発生することのない理想的な未来の実現について議論を展開している。しかし、長期にわたる段階的な移行期間の中で、ロボットカー(自動運転車)と、人間の運転する従来型の自動車とが路上を並走し、あらゆる危険性を共有しなければならないという事実については、ほとんど触れることがない。
ロボットカーを推進する目的が、道路の安全性を実現することであるなら、自動運転車の開発メーカーは今こそ、人間と機械との間の“コミュニケーション不足”の問題について、取り組みを開始すべきではないだろうか。
現実を直視しよう。ロボットカーは、人間の意図を理解することができない。他のドライバーの急な動きを予測できないため、事故を回避することは不可能だ。その一方で、人間のドライバーは、自覚しているよりも無謀な運転をしがちのようだ。
ではどうすればよいのだろうか。理想としては、ロボットカーだけを走行させるようにすればよい。しかし、実際にはこの先も、人間の運転する自動車が、路上で曲がりくねりながら走行したり、クラクションを鳴らしたり、車の後ろにぴったりついて、突然車線を変更したりするだろう。
今後、ロボットカーにもさまざまなセンサー技術を適用することで、透視能力のような機能を搭載できるのではないだろうか。しかし今のところ、人間のドライバーの心まで読み取れるような透視機能はまだ存在しない。
このような、自動運転車の実現に向けたビジョンが不十分であるという現状に対し、恐れることなく立ち向かっているのが、イスラエルAutotalksのCEO(最高経営責任者)であるHagai Zyss氏だ。
同氏は、米国ミシガン州デトロイトで2018年1月14〜28日に開催された「North American International Auto Show」において基調講演に登壇し、「自動運転車と人間の運転する自動車との関係が調整不足であるために、自動運転車の構想がうまく進んでいない」と主張した。
同氏は、EE Timesが最近行った電話インタビューの中で、講演の様子について問われると、「広く受け入れてもらえたようだ。自動車メーカーは最初から、専用のV2V通信を導入する必要があると分かっていたのだろう。人命を守る上で誰もが利用できる、新しい安全対策手段だといえる」と述べている。
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