今回Ampere Computingが発表したSoCの特長としては、「Armv8」に基づく64ビットの32コアで、最大動作周波数が3.3GHz、125Wの低消費電力、ソケット当たりのメモリ容量が1テラバイト、PCIe(PCI Express) 3.0対応のレーン数が42などが挙げられる。Ampere Computingは、「今回発表したX-Gene 3は、競合他社のSoCと比べて、メモリ容量と帯域幅を33%高められる」と主張する。
Ampere Computingは、もともとAMCCが取得していた、「Armv8-A」のアーキテクチャライセンスによるメリットを享受できると確信しているようだ。Ampere Computingはこのライセンスについて、「半導体開発のカスタマイズを推進していく上で、重要な鍵になる」とみている。
米国の調査会社IDCでコンピューティング半導体担当リサーチバイスプレジデントを務めるShane Rau氏は、EE Timesのインタビューに対し、「アーキテクチャライセンスがあれば、長期的に設計上の選択肢が広がり、差異化を実現できるようになる」と述べている。
同氏は、「例えば、サーバ向けプロセッサメーカーとして、市場において平均販売価格(ASP)と利益の確保をめぐって真剣に競争を繰り広げていくためには、自らのターゲットとする顧客や市場、設計などを選択して、差別化を実現可能な価格や性能、電力、機能などを組み合わせることにより、長期にわたり差別化を継続していく必要がある。このようなことは、プロセッサライセンスでは不可能だが、アーキテクチャライセンスでは全てを実現できるのではないか」と付け加えた。
だが、CaviumやHuawei(HiSiliconの親会社)、Broadcom、Qualcommなど、Armのアーキテクチャライセンスを保有しているメーカーは他にもある。Ampere Computingがどれほどの優位性を確保することができるのかは不明だ。
Ampere ComputingのSankaran氏は、「市場では現在、x86の代替となる命令セットアーキテクチャの登場が待ち望まれている」と述べる。
しかし、本当にそうだろうか。Intelが、サーバ向けSoC市場でいまだに優勢を維持しているということは、Armベースのサーバ向けプロセッサに対する需要がそれほどでもないということを示しているのではないだろうか。
IDCのRau氏は、「これまで、Armベースのサーバ向けプロセッサを手掛けるメーカー各社の取り組みの妨げとなってきた要因として挙げられるのが、ハードウェア/ソフトウェアエコシステムやプロセッサ設計が不十分だったために、x86サーバ向けプロセッサメーカー各社との間で十分に競争できるような性能を達成できなかったという点だ」と指摘する。
しかしRau氏は、「機器メーカーやクラウドサービスプロバイダー、OSベンダー、アプリケーションメーカーなどのArmエコシステムは、十分に優れたデータセンターシステムを構築することができる」と主張している。
また同氏は、プロセッサ設計について問われると、「Ampere Computingの設計については、技術的なメリットに関する詳細を挙げることができない。しかし、Ampere ComputingやQualcomm、Caviumなどの、最新世代のサーバ向けプロセッサ設計には、旧世代にはない特長がある。例えば、より高性能なコアを数多く搭載している、キャッシュの容量が多い、といった具合だ。
Rau氏は、Renée James氏の役割は、大手の潜在顧客との関係を築くことに尽きるとみている。Gwenapp氏は、懐疑的な見方をしている。「Ampere Computingが成功するには、旧AMCCのX-Gene 3あるいは、次の製品で、クラウドサーバ市場に大きな風穴を開ける必要がある」(Gwenapp氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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