セッション29の「最先端のバイオメディカルシステム」では、ヘルスケアや医療などの応用を想定した半導体技術が続出する。
ドイツのUniversity of Freiburg-IMTEKとドイツによるHahn-Schickardの共同研究チームは、114本の短針プローブによって脳神経信号を並列に取得するシステムを発表する(講演番号29.2)。短針プローブの寸法は長さが11.5mm、幅が70μmである。0.18μmのCMOSプロセスで製造した。信号を取得するプローブの電極ごとにΔΣ(デルタシグマ)変調方式の11ビット分解能アナログデジタル変換回路を集積している。電極の大きさは70μm角。各電極で信号をデジタル化することにより、アナログ信号配線の引き回しによる雑音の問題を解消した。
脳神経信号を取得したときの雑音電圧(RMS値)は、1Hz〜300Hzの範囲(局所フィールド電位の計測)で8.1μV、300Hz〜10kHzの範囲(活動電位の計測)で13.4μVである。クロストークは−74.4dB(周波数は1kHz)。外部との入出力インタフェースは8本の電線であり、電源供給やバイアス、デジタル信号伝送などを担う。
セッション30の「次世代メモリ」では、抵抗変化メモリ(ReRAM)と酸化物メモリの研究成果が披露される。
台湾のTSMCは、11Mビット(256K×44ビット)の埋め込み用ReRAMマクロを発表する(講演番号30.1)。製造技術は40nmプロセス。新開発のセンスアンプによってアクセス速度を従来に比べて58%向上させた。また書き込み技術の改良によってデータ書き換え特性とデータ保持特性を高めている。
半導体エネルギー研究所と東京大学の共同研究グループは、酸化物半導体FET(OSFET)による書き換え可能回数が1014サイクルと長い、埋め込みメモリを開発した(講演番号30.4)。メモリの記憶容量は1kビット。読み出しのアクセス時間は45ナノ秒、消費エネルギーは97.9pJ。書き込みのアクセス時間は20ナノ秒、消費エネルギーは123pJである。
セッション31の「機械学習に向けたインメモリ・コンピューティング」では、Stanford Universityほかの共同研究チームが、学習用データセットが少なくて済む、脳型コンピューティング回路を報告する。
Stanford UniversityとUniversity of California, Berkeley(UCB)、Massachusetts Institute of Technology(MIT)の共同研究チームは、カーボンナノチューブFETとReRAMによる脳型コンピューティング回路を発表する(講演番号31.3)。学習用データセットを少なくしながら、複数の言語と文章を認識するシステムを目指して開発した。試作したシリコンダイは、2万を超える文章から21種類の欧州言語を98%の正確さで分類できたとする。
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