AI(人工知能)をさらに発展させるヒントは、人間の脳にあるかもしれない。「ISSCC 2018」で、フランスCEA-Letiに聞いた。
「既存のコンピューティングの代替技術を見つけるために人間の脳に回帰する」という考え方は、それほど新しいものではないようだ。
CEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)のチーフサイエンティストであるBarbara De Salvo氏は、「人工知能(AI)が1950年代半ばに登場して以来、多くの科学者やエンジニアが、こうした考え方に興味を抱いてきたが、AI関連の研究はこれまで、浮き沈みの波に翻弄されてきた」と述べている。
同氏は2018年2月12日に、半導体集積回路技術の国際会議「ISSCC 2018」(米国サンフランシスコ、2018年2月11日〜15日)で基調講演に登壇した後、EE Timesのインタビューに応じ、「人間の脳に発想を得た技術について真剣に検討すべき時が来た。半導体業界は、新しいコンピューティングパラダイムやアルゴリズムを見つけられなければ、一段と厳しくなる消費電力要件に対応していく上で、最終的に壁にぶつかることになる」と警告している。
また同氏は、「半導体業界はこれまで、Movidiusの『Myriad 2』や、Mobileyeの『EyeQ5』、NVIDIAの『Xavier』などをはじめとする、組み込みAIプラットフォームを推進してきた。しかし現在、エッジ上で大量の分析処理を実行しながらも消費電力量が極めて少ないエンドデバイスの需要を満たすという目標の実現には、程遠い状況にある」と指摘する。
De Salvo氏は基調講演の中で、複数のインテリジェントチップについて、推論位相における電力1W当たりの演算性能(GOPS/W)と、演算性能(GOPS)とを比較して見せた。
同氏は、「各種要件と既存のソリューションとの間には、現在もまだ非常に大きなギャップがある。既に市場投入されて、試作版も製造し、学術分野において設計、開発されたチップでも、100μWを下回る低消費電力要件に対応できる製品は、1つもない」と指摘している。エッジデバイスは、何年間も持続可能なエネルギーハーベスティング(環境発電)や超小型電池などに依存しなければならないため、このような低消費電力要件を実現する必要がある。
De Salvo氏は、「人間の脳の重量は、全体重の約2%にすぎないが、脳の代謝量は、体全体の20%を占めている」と付け加えた。
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