産業技術総合研究所(産総研)らの研究グループは、高い放熱性能を持つゴム複合材料を開発した。しなやかで壊れにくいため、フレキシブルデバイス用基板などへの応用が期待される。
産業技術総合研究所(産総研)産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ タフコンポジット材料プロセスチームの伯田幸也ラボチーム長と後藤拓リサーチアシスタント、東京大学大学院新領域創成科学研究科の寺嶋和夫教授らによる研究グループは2018年3月、高い放熱性能を持つゴム複合材料を開発したと発表した。しなやかで壊れにくいため、フレキシブルデバイス用基板などへの応用が可能となる。
産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリは現在、機械特性と機能性を両立させる新たなエラストマーコンポジット「タフコンポジット」の開発に取り組んでいる。ここでは、無機フィラーをポリロタキサンの環状分子に結び付けることにより、無機フィラーが高濃度であっても摩擦エネルギーを抑えて、機械特性と機能性を両立させるための研究を行ってきた。
研究グループは今回、無機フィラーの表面改質を行い、機械的特性に優れたポリロタキサンと複合化し、「しなやかさで放熱性能が高く、壊れにくい」エラストマーコンポジットを得るための研究を行った。具体的には、窒化ホウ素(六方晶)粒子を塩化ナトリウム水溶液中に分散。その後、パルス電圧を印加し水中プラズマを発生させて無機フィラーの表面改質を行った。
表面改質をした窒化ホウ素粒子は、ろ過して分離、乾燥させる。そして、トルエン溶媒中でポリロタキサンや触媒、架橋剤とともに練り込んで架橋することにより、エラストマーコンポジットを作製した。
研究グループは、開発したエラストマーコンポジットについて機械的特性を評価した。窒化ホウ素濃度が50wt%のエラストマーコンポジットは、均質で無機フィラーが一様に分散しているため、繰り返し変形させても柔軟性や形状が維持されることが分かった。
さらに、プラズマ表面改質をした窒化ホウ素粒子と、そうでない窒化ホウ素粒子を用意し、窒化ホウ素粒子の濃度を20wt%と50wt%にしたエラストマーコンポジットを作製した。フィラーを使わないエラストマーも特性比較のために作製し、それぞれの応力伸長比曲線や靭性(粘り強さ)を測定した。
この結果、表面改質をすることで靭性が最大5倍も向上し、壊れにくい材料となることが分かった。測定結果から、窒化ホウ素粒子を用いたエラストマーコンポジットは、引っ張り強度がフィラーを使わないエラストマーより大きかった。表面改質済みの窒化ホウ素粒子を用いたエラストマーコンポジットは、表面改質をしない場合よりも破断長さが大きくなった。さらに、プラズマ表面改質を行ったことで、ヤング率は維持されたままで、引っ張り強度と破断伸びが向上した。
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