IBMの「POWER9」プロセッサを搭載したサーバが、システムメーカー10社から発表された。Intelのx86プロセッサに代わるプロセッサとして、売り上げが伸びるとみられている。
IBMの「POWER9」プロセッサは、Intelのx86プロセッサに代わる製品として売り上げの増加が期待されている。こうした状況の中、システムメーカー10社がPOWER9を搭載したサーバを発表した。これらの企業の動きは、Intelが独占する市場では小さな前進にすぎないかもしれないが、最も収益性の高いセグメントの1つであるデータセンターにおける機械学習(マシンラーニング)のシェア獲得につながると期待される。
IBMの「OpenPOWER」イニシアチブの初期パートナーであるGoogleは、POWER9システムのテストを拡大すると発表した。この取り組みを率いるエンジニアは、「同アーキテクチャに対する当社の投資額を考えると、2018年中に少なくとも一部のPOWERシステムの製品化を目指したいところだ」と述べている。
中国のAlibabaとTencentもPOWER9のテストを行っている。Tencentは、「POWER9は、x86と比べてサーバやラックの数が少ないにもかかわらず、性能は30%優れている」と述べている。
この他、少なくともWeb大手1社が2018年中にPOWER9システム製品を発表する見通しだ。また、IBMのOpenPOWERイニシアチブのゼネラルマネジャーを務めるKen King氏によると、公表はされていないが、少なくとも大手サーバメーカー1社がデータセンター向けにPOWERシステムを提供する予定だという。
King氏は、「今後4年以内に、販売価格が5000米ドル以上のLinux向けサーバのデザインウィンを少なくとも20%獲得することを目指している」と述べている。POWERプロセッサのロードマップによると、IBMは、2019年に14nmへのアップグレード、2020年以降に「Power 10」の発売を計画している。同社は、約2年前に発表した計画通り、2020年には7nmプロセスの適用も視野に入れているという。
POWER9は、既存モデルと比べてコストや帯域幅、移植のしやすさが向上している。IBMのパートナー企業によると、POWER9はIBMが初めて標準DIMMを搭載したモデルで、他の標準コンポーネントも使用しているため、「POWER8」と比べるとシステムコストが20〜50%抑えられているという。
POWER9をNVIDIAの複数のGPU「Volta」に接続できるIBM独自の「NVLink 2.0」は、x86より広い帯域幅を実現する。新しいPOWER9システムの多くは、ニューラルネットワークのトレーニングにおけるNVIDIAのGPUの優位性を活用して、機械学習向けの大規模データセンターでの採用を狙う。
Googleが、POWER9が有望だと考えている理由は幾つかあるが、そのうちの1つが、Googleの機械学習向けプロセッサ「TPU(Tensor Processing Unit)」などのアクセラレーターを組み合わせることで、高性能ホストとして機能する点だという。Googleのシステムエンジニアで、Open Power Foundationの財務管理を担当するMaire Mahony氏は、「POWER9は、Googleの検索タスクのパフォーマンスに密接に関連するコアやスレッドのサポートも充実している」と述べている。
IBMは別のイベントで、NVIDIAのGPUを搭載したPOWER9サーバを、ディープラーニング処理向けに、クラウドサービスとして提供することも発表している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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