同社はこの20年間で、さまざまなIC設計を手掛けてきた。特に、「タブレット端末、スマートフォン、デジタルTV、音声アシスタント機器などに向けたICチップでは高いシェアを獲得している」という。SoCやASSP製品ユーザーやパートナー企業の一例として、パナソニックやソニー、Samsung Electronics、LG Electronics、Lenovoなどを挙げた。
ASIC事業についても、これまでの納入実績やパートナー企業との協業をベースに取り組みを強化する。ASIC事業に関して同社は、いくつかのビジネスモデルを用意した。顧客の要求に対し、柔軟な対応を行うためである
ASICの開発工程は、「システム設計」「チップ設計」「論理合成」「配置配線」「製造」「量産」などに大別することができる。こうした工程の中で、顧客は自らの開発方針や技術スキルに合わせて、ASIC開発をMediaTekに委託することができる。例えば、顧客が独自のIPコアを有し、チップ設計の技能や知識があれば、チップ設計後の工程のみをMediaTekに委託する。もちろん、仕様策定の初期段階から設計をMediaTekに依頼することも可能である。「ASICビジネスパートナーとして、さまざまな形態で顧客をサポートできる体制を整えた」(Hsu氏)と話す。
必要に応じて先進IPコアの開発も独自に行う。これらが「製造サービスを中心に展開している一般的なASICベンダーとは異なる点」と強調する。新たに、56Gbps対応のSerDes IPコアも開発した。
既に7nm FinFETプロセスでチップを試作し、IPレベルでの動作を確認済みだという。プロダクトレベルでは16nmプロセスでネットワークスイッチ向けASICを開発済みである。56G SerDesは、RAM-4(4値パルス振幅変調)信号に対応するDSPベースのソリューションで、「電力効率に優れ、リアルロングレンジのデータ伝送に対応できる」という。さらに、112GbpsのSerDes IPコアも開発中だという。
MediaTekにおけるASICの事業規模は現在、全社売上高の10%未満である。しかし、今後は市場の大きな伸びが期待できるとして、主力事業の1つにしたい考えである。ASIC事業で注力する用途として同社は、ゲーム機器やデジタルカメラ、プリンタ、ADAS、産業機器、ネットワーク用スイッチ/ルーター機器、5G(第5世代移動通信)向けインフラ装置、AI(人工知能)/ディープラーニング向け処理エンジンなどを一例として挙げた。
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