最近では、1m以下の距離でも光伝送技術の研究開発が活発化している。
ICの性能は「ムーアの法則」によって指数関数的に伸びているが、そうしたICを搭載する際、伝送ロスやクロストークなどに制限されてしまう電気配線が課題になっている。一方、光伝送では伝送ロスが少なく、信号同士の干渉がほとんどないため、多本数の高速配線の実現が期待されているのだ。
バックプレーンやPCB(プリント配線板)上などでは、有機材料の光の通り道(導波路)をエッチングで形成した有機導波路伝送の研究開発が行われている。また、シリコン基板にCMOSプロセスを用いて光の導波路を形成するシリコンフォトニクスの研究開発も活発だ。シリコンフォトニクスでは、シリコン基板上に、光導波路だけではなく光変調器、光受動素子、Ge(ゲルマニウム)受光素子など、さまざまな機能素子を形成できるので、光信号を入出力とするICパッケージやチップ内配線の実現が期待されている。
前回と今回の記事で紹介したように、光伝送技術は広い応用範囲を持ち、現代の高度情報化社会を支えている“縁の下の力持ち”の一つである。
今回は、先人の偉業に触れることがほとんどできなかったのが心残りではあるが、今後、技術の解説と絡めながら紹介していきたいと思う。特に日本の寄与は大きく、私たちはそれを享受できる環境にいるのだ。
次回以降、データセンターやモバイルネットワークなどにおける、最近の光伝送技術の応用の他、光デバイスやシリコンフォトニクスの最新技術を解説していく。
30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。
日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。
さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。
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