屋外エアコンと言うと、建設現場や工場などに設置される「スポットクーラー」が思い浮かぶ。業務用途であるため武骨なデザインである機器が多く、かつ冷風を局所に送るため冷気を多人数と共有できず、公共施設や店舗のテラスにスポットクーラーを設置することはそぐわない。
そのような状況をビジネスチャンスと見たダイキン工業は、商業施設や駅などの屋外、屋外イベント会場への設置に向けたエアコンを開発している。同社は、東京都環境局主催の「暑さ対策技術等の展示」(2018年7月23〜25日、東京ミッドタウン日比谷)に開発中の試作機を出展。この涼風も体験してみた。
体験当時の天気は曇り、気温は30℃(気象庁アメダスデータより)。前述のグリーンエアコン体験時よりは幾分涼しい天候だったが、やはり暑い。しかし、屋外エアコンへ近づくとしっかりとした涼風を感じ、取材中は屋外エアコンより1〜2mほど離れた場所に立っていたが、暑さはほぼ気にならないほどの涼しさだった。
同機は、吸い込んだ空気から熱を取り除き、天井面から上部に排出。本体の側面から周囲に冷風を届けるヒートポンプ式エアコンとなる。吹出口から出る冷風は、「外気温から約10℃」(同社担当者)低い温度で、風速12m/秒と強力だ。これにより、「エアコンから半径約3m離れた周囲まで冷風を届けることができる」とする。
同社担当者は屋外エアコンについて、「通常のエアコンで言う室外機と室内機を一体とした機器」と例える。屋外エアコンの長所として「ミスト噴霧や冷風扇で必要な給水配管が要らないため設置が手軽」であることや、「(他の屋外冷房手段と比較して)エアコンならではの涼しくカラッとした風を供給する」ことを挙げた。
また、同機は「商業施設や駅などの公共施設に設置しても違和感なく、公共の場所になじむデザイン」(同社担当者)とした。本体の全ての側面から冷風を届けることで冷気を多人数と共有できることも、屋外冷房の観点でスポットクーラーと比較した場合の長所となる。
同機の消費電力は一般の家庭用エアコンと同程度として、単相200V電源で動作する。質量は約80kgだが、本体下部にキャスターを取り付け簡易な機器移動に配慮した。機器稼働中は、不慮の移動や転倒を防ぐため敷板に固定する。
同社は2019年内の商品化を目指しており、「目標は夏前」(同社担当者)。価格は「100万円を切る程度」を想定する。展示中の一般来場者からは「涼しい」とおおむね好評を得たとする。商品化に当たって、今後は「人の検知や気温によって運転モードを制御する機能」などを追加する可能性があるとした。
ただ不快なだけでなく熱中症の発症など、もはや健康に悪影響を及ぼす暑さである2018年の夏。これら屋外冷房技術が普及することで、夏の屋外がより快適で安全な環境になることを期待している。
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