産業技術総合研究所(産総研)は、長さの国家基準にトレーサブルの厚さ測定用両面干渉計を開発した。3次元積層用シリコンウエハーの厚みを管理する用途などに向ける。
産業技術総合研究所(産総研)工学計測標準研究部門ナノスケール標準研究グループの平井亜紀子研究グループ長と、長さ標準研究グループの尾藤洋一研究グループ長は2018年9月、長さの国家基準にトレーサブルの厚さ測定用両面干渉計を開発したと発表した。3次元積層用シリコンウエハーの厚みを管理する用途などに向ける。
シリコンウエハーの厚みを非接触で測定するために、これまで分光干渉方式が広く利用されてきた。この方式はシリコンを透過する赤外光を用い、試料表面からの反射光と、試料内部を透過し試料裏面で反射した光の干渉を利用する仕組みである。この方法だと、正確な屈折率の情報が必要となる。ところが、シリコンの屈折率はロットごとのばらつきや不純物の濃度によって異なるため、提供される文献値が常に正しいとは限らないという。
産総研が開発した厚さ測定用両面干渉計は、2台のレーザー干渉計で構成し、被測定試料の両側に配置する。試料表面で反射した光と、参照鏡で反射した光の干渉縞をCCDカメラで撮影し、試料両面の凹凸形状を測定する。複数枚の干渉縞画像を測定すれば、計算によって表面の凹凸形状を高い精度で求められるという。
同時に、試料の周囲空間を透過した光と、参照鏡で反射した光との干渉縞画像も計測して、厚さ測定の基準平面を求める。これらの結果を組み合わせて、試料の厚さ分布を求めるという。ただし、光の干渉縞は絶対的な長さを求めるのが難しい。今回は、周波数(波長)の異なる3種類の周波数安定化レーザーを光源として用いた。波長ごとに測定し、合致法によって絶対的な長さを求めた。
開発した厚さ測定用両面干渉計を用いて、厚さ1mmから30mmの校正済みブロックゲージを測定した。この結果、ブロックゲージの校正値と±10nm以内で一致することを確認した。
さらに産総研は、大塚電子が提供するシリコンウエハーと保持具を用いて、ウエハーの厚みを測定した。外形寸法が約30×10mmで厚み200μmのシリコンウエハー片を測定面が鉛直になるよう保持具に設置。ウエハーの左面と右面から得た干渉縞画像を処理し、ウエハー両面の高さ分布をそれぞれ算出した。その後、左面と右面のデータを合成し、最終的に厚さ分布の画像を得た。
こうして得られた校正済みシリコンウエハーは、ウエハーメーカーなどが設置する厚さ測定装置の校正用標準試料として用いることができるという。
産総研は今後、測定可能な厚みの範囲を広げていく。また、シリコンの屈折率検証、屈折率と不純物濃度の依存性評価、ウエハー内部における屈折率均一性の評価などにも、開発した測定手法を適用する。さらに、GaAsウエハーやInPウエハーなどの厚さ測定にも、今回の測定手法を応用する方針である。
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