アプライド マテリアルズ ジャパンは、半導体製造装置メーカーとしての視点から、AI(人工知能)/IoT(モノのインターネット)時代に向けた材料やシステムの課題などについて語った。
アプライド マテリアルズ ジャパンは2018年9月21日、東京都内で記者説明会を行い、半導体製造装置メーカーとしての視点から、AI(人工知能)/IoT(モノのインターネット)時代に向けた材料やシステムの課題などについて語った。
半導体デバイスやディスプレイパネル用製造装置の最大手メーカーであるアプライド マテリアルズ(Applied Materials)は、2018年7月に米国サンフランシスコで開催されたセミコンウェストで、SEMIと「AIデザインフォーラム」を共催した。このフォーラムで社長兼CEOを務めるゲイリー E ディッカーソン氏が行った基調講演について、日本法人の社長を務める中尾均氏がその概要を紹介した。
中尾氏は、「ビッグデータやIoTを活用したこれからのAI時代は、データが価値を持つ時代」と強調した。しかも、膨大なデータが生成される。これまでは人間が多くのデータを生み出してきた。今後は自動運転や次なる製造業革命「Industry 4.0」など、現場で発生するデータ量が爆発的に増える見通しだ。
データ量の推移も具体的に示した。2017年のデータ量は1.5Z(ゼタ)バイト。これが2018年には2Zバイトに増え、2022年には10Zバイトに達するという。データの中身も大きく変わる。例えば、2017年はデータ量のうち53%を人間が生み出した。残りはそれ以外が生み出すデータである。人間が生み出すデータは絶対量として今後も減少することはないが、構成比として2018年は44%となり、現場で生み出されるそれ以外のデータと逆転する。2020年には人間が生み出すデータ比率は10%以下へと減少する見通しを明らかにした。
膨大なデータを活用して価値を生み出すためには、大量データを蓄積するためのメモリ技術や、高速に演算/分析するための並列処理技術などが必要となる。中尾氏は、「ムーアの法則が限界を迎えようとしている中で、これからの半導体チップは、ワット当たりの処理性能を現状より1000倍高める必要がある。コストも含め必要とされる性能を達成するには、新しいコンピュータアーキテクチャや新構造のデバイス、新材料、新たなパッケージ技術などが必要」と話す。
技術革新に向けたアプライド マテリアルズの取り組みについても紹介した。その1つは、AI向けに人の脳の動きを模した電子スイッチの開発をアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)から受託したことである。ArmやSymetrixと協働し、同一材料内でデータの保存と処理を行うことができるCeRAMベースのニューロモーフィックススイッチを開発するという。アナログ信号処理を活用してAIのコンピューティング性能と電力消費効率の向上を目指す。
もう1つは、トランジスターのコンタクトや配線に、新たな電導材料であるコバルトを利用することだ。7nmノードなど微細化が進む中で、従来のタングステンや銅では電気性能の向上が限界となっていた。コバルトを採用することで、半導体チップの性能を最大15%改善できるという。
さらに、新構造デバイスや新たなパッケージ技術の事例として、3D NANDフラッシュメモリや、異種プロセッサをワンパッケージに統合し、性能向上やコスト低減を可能とするSoCなどを紹介した。
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