トレックス・セミコンダクターは、0603サイズ(0.6×0.3mm)のセラミックコンデンサーを使用できる、同期整流型の降圧DC-DCコンバーターIC「XC9281」「XC9282」シリーズを開発した。
トレックス・セミコンダクター(以下、トレックス)は2018年10月10日、入力容量(CIN)および出力容量(CL)に0603サイズ(0.6×0.3mm)のセラミックコンデンサーを使用できる、同期整流型の降圧DC-DCコンバーターIC「XC9281」「XC9282」シリーズを開発したと発表した。入力電圧範囲は2.5〜5.5Vで、出力電圧範囲は0.7〜3.6V。最大出力電流は600mAとなっている。リチウムイオン電池で駆動するIoT(モノのインターネット)機器やウェアラブル機器などに向ける。
IoT機器やウェアラブル機器が相次いで市場に投入され、普及する中、機器に搭載される電子部品は、少ない容量のバッテリーで長時間動作することが求められている。電源ICも例外ではない。トレックスは、「小型かつ低消費の電源ICに対する需要は高まっている」と述べる。
もう一つ、注目すべき動向がある。セラミックコンデンサーが供給不足の状態になっているということだ。電源ICでは1.0×0.5mm(1005サイズ)のセラミックコンデンサーがメインで使われているが、供給不足を解消すべく、より数を取れる0603サイズへの移行が始まりつつある。だが、セラミックコンデンサーは、サイズが小さくなると特性が悪くなるという傾向がある。そのため、0603サイズのセラミックコンデンサーを使うには、悪化する特性にも対応できるような電源ICを開発する必要があった。
XC9281/82シリーズは、こうした小型化や低消費電力化、0603セラミックコンデンサーへの移行という背景の元に開発された製品だ。トレックスは、電源回路を小型化しつつ、特性を維持するという2点を重視して開発したという。
XC9281/82シリーズの特長は3つ。まずは実装面積の小型化だ。
Lx波形生成回路の改良により、発振周波数が6MHzとなったことで、1.0×0.5mm(1005サイズ)の0.47μHのコイルを使えるようになっている。さらに、位相回路を改良し、トレックス独自の高速過渡応答技術「HiSAT COT」*)制御による帰還制御の安定性を向上することで、容量抜けが大きい0603サイズのコンデンサーに対応できるようになった。加えて、レイアウト面積が小さい新たな回路設計と、従来品よりもゲート長の小さなプロセスを採用することで、パッケージも小型化。従来に比べ、チップサイズは35.7%減、パッケージサイズは36.7%減になっている。
*)HiSAT COT:High Speed circuit Architecture for Transient with Constant On Time
これらによって、外付け部品なしの実装面積は従来比で10分の1となる1.7mm2、コイルと入出力コンデンサーなど周辺部品を含めても6.6mm2と、小さい実装面積を実現した。
2つ目の特長として高い効率が挙げられる。発振周波数が6MHzと高周波なのにもかかわらず、トレックスの従来品である3MHz品の「XC9236」よりも効率が高く、例えば3.7Vから1.8Vに降圧(出力電流は300mA)する場合、約90%の効率を達成するという。特に軽負荷側では、XC9236に比べて5%ほど効率が高いケースもある。ゲート長の小さいプロセスの採用によるドライバー回路の低オン抵抗化の他、ドライバーを動かすためのプリドライバー回路の改良によるLx信号の立ち上がりおよび立ち下がり速度の高速化を達成。これらによって、高い効率を実現したという。
さらに、消費電流も11μAと低い。「11μAよりも低い消費電流を実現している製品は、トレックスも競合他社も提供しているが、これ以上低くなると効率が犠牲になる。高い効率との両立を実現できる最大限の低消費電力化を図った」(トレックス)
XC9281/82シリーズのサンプル価格(税別価格)は200円。2018年10月中に量産を開始する。月産の量産規模は、2018年内は50万個以上、2019年には150万個以上を目指すとする。
機器メーカーは、0603サイズのセラミックコンデンサーへの移行というトレンドを認識しながらも、それに対応する電源ICが市場にはなかったために、0603サイズのセラミックコンデンサーを設計には使えずにいた。トレックスによると、「0603サイズに対応できるというのを伝えるだけでも興味を持ってくれる」と述べた。
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