日立、新構造のSiCパワーデバイス「TED-MOS」を発表 : エネルギー損失を50%低減
日立製作所は、新構造を採用することで耐久性を高めたSiC(炭化ケイ素)パワー半導体「TED-MOS」を開発した。50%の省エネが可能となる。
日立製作所は2018年8月、新構造を採用することにより耐久性を高めたSiC(炭化ケイ素)パワー半導体「TED-MOS(Trench Etched DMOS-FET)」を開発したと発表した。
TED-MOSは、一般的なトランジスター構造「DMOS-FET」をベースに、ひれ状の溝(Fin状トレンチ)を形成する新構造とした。これによって、従来のDMOS-FETに比べて電界強度と抵抗の低減、エネルギー損失の削減に貢献するという。
左は従来のDMOS-FETと一般的なトレンチ型MOSFET、右は新たに開発したTED-MOSの構造イメージ図 (クリックで拡大) 出典:日立
SiCパワー半導体は、モーター駆動用インバーターの省エネを可能にするため、EV(電気自動車)などの用途で注目されている。ところが、従来の構造だと、トレンチの低角に電界が集中しやすく、耐久性が課題となっていた。
日立はこれまで、耐圧3.3kVの産業用途向け「TED-MOS」を開発してきたとする。今回はこの技術をベースに耐圧1.2kVのEV向けパワー半導体を開発した。新たな構造として、デバイス中央部に「電界緩和層」を設けた。これによって電界強度を大幅に削減した。さらに、デバイス中央部の抵抗を下げるため「電流拡散層」を設け、Finの側壁を電流経路とした。これらの工夫により電界強度と抵抗の低減を両立させた。
試作したTED-MOSで特性を評価した結果、電界強度は従来のDMOS-FETに比べ40%低減した。その上、耐圧1.2kVを確保ながら、抵抗を25%小さくした。こうした特性改善と新構造の採用により、デバイスのスイッチング速度も速くなり、エネルギー消費を50%削減できることが分かった。
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