メモリセルアレイのベースとなるマルチペア薄膜の形成 : 福田昭のストレージ通信(119) 3D NANDのスケーリング(7) (2/2 ページ)
ペア薄膜には主に、異なる2つのタイプがある。1つは、酸化膜と多結晶シリコン膜のペアである。酸化膜が隣接セル間の絶縁層、多結晶シリコン膜が制御ゲート層となる。もう1つは、酸化膜と窒化膜のペアである。酸化膜は隣接セル間の絶縁層となる。窒化膜はいわゆる犠牲層で、エッチングで除去したあとに制御ゲートの金属層を埋め込むことになる。
マルチペア薄膜の成膜に要求される項目(課題)には、高い均一性、応力(ストレス)の排除、高い生産性(高スループット)などがある。高い均一性を得るには、成膜用チャンバー間のばらつきの低減、成膜用ガスの流路制御、高い精度の温度管理などが求められる。
次の課題は応力の排除である。マルチペア薄膜では局所的に応力が集中することがある。薄膜の品質を管理し、さらにはウエハー裏面における不要な薄膜生成(バックサイドデポジション)を抑制することが求められる。
最後の課題は、生産性の向上である。48ペア、32ペアといった数多くのマルチペア薄膜の堆積では、堆積時間をなるべく短くすることが求められる。マルチチャンバー成膜装置のチャンバー数を増やす、成膜速度を高めるといったこと手法が考えられる。ただしチャンバー数の増加と成膜速度の高速化はいずれも、マルチペア薄膜の均一性を低下させる恐れがある。トレードオフに留意しなければならない。
マルチペア薄膜形成(Multi-pair Deposition)技術の概要。左の写真は、形成したマルチペア薄膜の断面を電子顕微鏡で観察した画像。右上の表は技術の目的と材料、右下の表は技術の課題と解決策。出典:Applied Materials(クリックで拡大)
(次回へ続く )
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