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SEMICON Japan 2018 特集

最先端のドライエッチング技術−マルチ・パターニングとHARC−湯之上隆のナノフォーカス(5) ドライエッチング技術のイノベーション史(5)(2/5 ページ)

» 2018年11月06日 11時30分 公開

ダブル・パターニングの原理

 ラインを形成する最もポピュラーなダブル・パターニングの一例を、図3を用いて説明する。この手法は、ドライエッチング後に形成されるパターン側壁の“残さ(ざんさ)”をうまく利用することから、サイドウオールプロセスとも呼ばれている。

図3:ダブル・パターニングの一例(クリックで拡大)

【1】最終的にラインパターンを形成したいSiN膜の上に、アモルファスカーボン層(Amorphous Carbon Layer、ACL)、SiON膜、反射防止膜(BARC)、ArF液浸露光によるレジストパターンを形成する。
【2】酸素プラズマによる等方性エッチングにより、レジストパターンをシュリンクする。これを、レジストスリミング、または、レジストトリミングと呼んでいる
【3】BARC、SiON膜、ACLを順に、ドライエッチングを行い、カーボンのパターンを形成する。
【4】カーボンのパターンに、原子層デポジション(Atomic Layer Deposition、ALD)により、薄膜を堆積させる。
【5】ALD膜に対して、異方性のドライエッチングを行う。すると、カーボンパターンの側壁に、エッチング残りが生じる。これをサイドウオールと呼ぶ。
【6】カーボンを除去すると、極めて薄いサイドウオールだけが残る。
【7】このサイドウオールをマスクに、SiNの異方性ドライエッチングを行う。
【8】マスクを除去すると、極めて微細なラインパターンが形成される。

 このようなダブル・パターニングにより、20nm程度のラインパターンが形成できる。ArF液浸露光の解像限界は38nmであるから、その約半分の微細化が実現できることになる。

10nm以降はどうやって加工しているか

 現在、最先端の微細加工では、10〜7nmのパターンが形成されており、TSMCやサムスン電子などは5〜3nmを開発している。このような超微細パターンも、波長13.5nmのEUV露光装置を使わなくても、形成可能となっている。

 では、どうやって上記のような超微細パターンを形成しているのか。簡単に言えば、ダブル・パターニングを2回繰り返すクアドロプル・パターニングや、3回繰り返すオクタブル・パターニングによって、10〜7nmや5〜3nmのパターンが形成できる。

 例えば、クアドロプル・パターニングのプロセスフローは以下のようになる(図4)。

図4:クアドロプル・パターニングの一例(クリックで拡大)

【1】SiN膜の上に、CVD Si膜、ACL膜、SiON膜、BARC、ArF液浸露光によるレジストパターンを形成する。
【2】レジストスリミングを行う。
【3】BARC、SiON膜、ACLを順に、ドライエッチングを行い、カーボンのパターンを形成する。
【4】カーボンのパターンに、1st ALD膜を形成する。
【5】ALD膜のドライエッチングを行う。すると、カーボンパターンの側壁にサイドウオールが形成される。
【6】カーボンを除去すると、薄いサイドウオールだけが残る。
【7】このサイドウオールをマスクに、Siの異方性ドライエッチングを行い、1st ALD膜を除去する。
【8】Siパターンに、2nd ALD膜を形成する。
【9】2nd ALD膜のドライエッチングを行う。すると、Siパターンの側壁に極めて薄いサイドウオールが形成される。
【10】Siパターンを除去すると、極めて薄いサイドウオールだけが残る。
【11】このサイドウオールをマスクに、SiNをドライエッチングする。
【12】マスクを除去すると、極めて微細なラインパターンが形成される。

 このクアドロプル・パターニングにより、10〜7nmのラインが形成できる。さらに、もう一回ダブル・パターニングを繰り返すオクタブル・パターニングにより、5〜3nmのラインが形成できる。

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