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SEMICON Japan 2018 特集

最先端のドライエッチング技術−マルチ・パターニングとHARC−湯之上隆のナノフォーカス(5) ドライエッチング技術のイノベーション史(5)(4/5 ページ)

» 2018年11月06日 11時30分 公開

高AR比のHARCエッチング

 筆者は、日立やエルピーダメモリで、4M〜1GビットDRAMのドライエッチング技術の開発を経験した。その際、常に苦しかったのはキャパシター用のHARC加工だった。最後の1GビットDRAMの開発では、HARCのAR比が10〜15になり、「もうダメだ、もう限界だ」と苦しんだ記憶がある。

 ところが、冒頭で述べたように、現在DRAMのHARCのAR比は45になっており、3次元NANDのメモリホール用HARCのAR比は70を超えている。AR比10〜15程度で苦しいなどというのは、今から見れば、何と幼稚な事かと思える。

 しかし、AR比45〜70以上のHARCが、一朝一夕にできたわけではないだろう。そこには、ドライエッチング技術者たちの工夫と奮闘があったはずだ。そして、今後、3次元NANDのメモリセルの積層数を64層→96層→128層→200層と増やしていくためには、AR比100を超えるようなHARC加工を行う必要がある。しかも、このような深孔を12インチウエハー全体で約2兆個も開口しなくてはならない。ドライエッチング技術者たちの奮闘は、今後も続く。

 では、このような高AR比のHARC加工では、何が難しいのか?

RIEによるHARC加工

 ここで、SiO2におけるRIEの原理を復習しよう(図7)。

図7:リアクティブ・イオン・エッチング(RIE)の原理(クリックで拡大)

【1】CF系ガスとArガスによる混合プラズマ中で生成されるCFXの反応種(ラジカル)を、拡散により、SiO2の表面に付着させる。
【2】シリコンウエハーにバイアスを印加して、プラズマ中で発生しているイオンをウエハに垂直に引き込む。すると、イオンアシスト反応が起きる。
【3】その結果、SiF4やCOなど、蒸気圧の高い反応生成物が形成され、これが揮発することによって、エッチング反応が進む。

 では、RIEによる3次元NANDのメモリホール用のHARC加工を図8で説明する。

図8:3次元NAND用メモリホールのHARCエッチング(クリックで拡大)

【1】64層の3次元NANDの場合、SiN/SiO2を64層積層し(約6μmとなる)、その上に2μm以上のACLとSiONを成膜し、孔のリソパターンを形成する。
【2】リソパターンにより、SiON膜を加工し、SiONをマスクに2μm以上のACLをRIEで加工する。
【3】ACLをマスクに、約6μmのSiN/SiO2のHARC加工をRIEで行う。その際、次第に深くなる孔底に、ラジカルを拡散で供給し、イオンを打ち込み、反応生成物を排気する、ということを全て同時に行う。
【4】孔底のストッパまで到達すれば、HARC加工が完了する。64層の3次元NANDの場合、HARCのAR比は65程度になる。

どうやって孔底にラジカルを供給するか

 高AR比のHARC加工において、最も難しいのは、次第に深くなる孔底に、どうやってラジカルを供給するかということである(図9)。

図9:ラジカルをどうやって深い孔底へ供給するか(クリックで拡大)

 イオンは、ウエハーにバイアスを印加することによって、孔底にほぼ垂直に引き込むことができる。しかし、プラズマ中で発生するラジカルは、拡散によって孔底にやってくる。つまり、ラジカルは真っすぐ飛んで来てくれないため、孔の側壁に衝突しながら、孔底に飛来することになる。

 ラジカルが孔の側壁に衝突すると、一部はそこに付着する。従って、同じエッチング条件で孔加工を続けていると、孔底に到達するラジカル量が減少する。もし、孔底にラジカルが到達しなくなると、エッチストップが起きる。つまり、所望のHARC加工ができないことになる。

 では、どうしたら、次第に深くなる孔底に、ラジカルを供給し続けることができるのか?

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