2018年1月から、「エイブリック」として営業を開始したアナログ半導体メーカーの旧エスアイアイ・セミコンダクタ。名称の変更が示すように、筆頭株主はセイコーインスツル(SII)から日本政策投資銀行(DBJ)へと変わっている。SIIから巣立ち、独立したアナログ半導体メーカーとして、エイブリックはどのように進んでいくのか。社長の石合信正氏に聞いた。
2018年1月から、「エイブリック」として営業を開始したアナログ半導体メーカーの旧エスアイアイ・セミコンダクタ。名称の変更が示すように、筆頭株主はセイコーインスツル(SII)から日本政策投資銀行(DBJ)へと変わっている。現在はDBIが株式の70%を、SIIが30%を保有している。
SIIから巣立ち、独立したアナログ半導体メーカーとして、エイブリックはどのように進んでいくのか。社長の石合信正氏に聞いた。
EE Times Japan(以下、EETJ) 2018年1月からエイブリックとして営業を開始しました。
石合信正氏 エイブリックは“全く新しい会社”だと思っていただきたい。もちろん、SIIの半導体事業で培ってきた「Small、Smart、Simple*)」の方向性は変えない。むしろSIIで培ってきたものは強みだと考えている。前工程、後工程、研究開発を一気通貫で持っているのもわれわれの強み。SII時代に築き上げたものは資産として継承しつつ、世界の最先端のやり方をどんどん取り込んでいこうとしている。
*)「Small」は超小型半導体製品の開発と製造、「Smart」は省電力なアナログ半導体を提供、「Simple」はシンプルで使いやすい製品の提供を意味する。
EETJ 2018年5月に発表した第一次中期経営計画では、2018年度〜2020年度の3年間を“準備期間”と、2020年度の売上高350億円を目標にしています(関連記事:22年度売上高500億円を目指すエイブリックの戦略)。この準備期間で何をする計画なのか、あらためて聞かせてください。
石合氏 準備期間として行うことは大きく2つある。1つ目は収益力の底上げだ。「収益力」にはさまざまな指標があるが、まずは利益率の改善に集中する。それに伴い、コストの改善、リードタイムや在庫の改善も図っていく。
2つ目は、エイブリックの独立性と組織を強化することだ。2018年1月5日にエイブリックとして営業を開始するまでは、人事、広報、財務・管理といった部門は、事業部としてSIIからサービスを受けていた。つまり、“自前”の部門を持っていなかった。現在はこれらを片っ端から切り出してエイブリックに移管しているさなかだ。
EETJ 1つ目のコスト削減ですが、これは具体的にはどのような方法で行うのでしょうか。
石合氏 これは人員削減という意味ではなく、合理的に無駄なコストを削減していく。仕事のやり方も見直し、必要があれば変える。東京に営業所を設立したのはその一環だ。(本社がある)幕張(千葉市)と東京を都度、往復数時間をかけて移動するのはもったいない。オフィスはフリーアドレス、ペーパーレスとし、会議システムも最新の設備に変えた。さらに、エンジニアの行き来も減らすため、バーチャルオフィスシステムで国内の全拠点を常時つないでいる。大きなスクリーンを設けて、そこに実際の事業所内の様子を映している。仕事をしている様子はもちろん、会話などもよく聞こえる(笑)
収益性は、これまでは拠点ごとの売上高や利益に縛られていたが、今はもう、そういう時代ではない。トータルでどうやって収益を上げていくかが重要だ。例えば、設計のスペックを決めるところは米国、部品を選定して発注するのは台湾、製造は中国、というメーカーも多数ある。そうしたグローバルにまたがる企業に、点ではなく面でカバーできるようにしなければならない。それができる体制作りは、思っていた以上に時間がかかる。ただ、それによって、体がやっと出来上がったという感覚でもある。
2020年度の売上高目標である350億円は、この2つで十分に達成できると考えている。
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