引き続き、創業7年目である1974年の状況を紹介する。今回は、クオーツ式腕時計に関連する事業の活動を主に紹介する。
Intelの公式文書である「年次報告書(アニュアルレポート)」をベースに、Intelの創業期の活動を創業年(1968年)から1年ずつ記述する連載の第12回である。連載第9回から、創業7年目である1974年の状況を紹介してきた。第9回では業績(決算概要)を、第10回では半導体メモリ事業の状況を、第11回(前回)ではマイクロプロセッサ事業の状況を報告した。今回は、クオーツ式腕時計に関連する事業の活動を主に紹介する。
本連載の第7回で報告したように、Intelは1972年7月に電子式腕時計(クオーツ式腕時計)の開発ベンチャー企業であるMicroma(Microma Inc.)を買収し、子会社とした。クオーツ式腕時計の狙いは、高い精度(少ない誤差)と低いコストを生かして機械式腕時計を置き換えることにある。
1974年の年次報告書(アニュアルレポート)には、クオーツ式腕時計に関連する事業の状況が記述されていた。クオーツ式腕時計の開発企業Micromaの事業は、主に2つある。1つは自社ブランドによるクオーツ式腕時計(完成品)を開発、販売する事業、もう1つは、腕時計メーカー向けにクオーツ式腕時計のモジュールを開発、販売する事業である。
腕時計市場における新興勢力であるMicromaのブランド力は当然ながら、弱い。そこで事業の主力は、有力な腕時計メーカーにクオーツ式腕時計モジュールを販売することに置かれた。ちなみにモジュールは、タイミングICや水晶振動子、液晶ディスプレイなどで構成される。タイミングICはIntelが開発、製造し、Micromaに供給した。
Micromaは、クオーツ式腕時計モジュールの販売先として有望な顧客1社を見つけることに成功する。年次報告書には明記していないが、記述のニュアンスからは、この1社から大量の注文があったと思われる。しかし正式には期待よりも大幅に少ない数量の注文しか得られず、モジュール生産ラインの稼働率は低迷する。
このため、1974年半ばからMicromaは、モジュールの販売先となる新たな顧客の開拓に奔走することになる。幸いにしていくつかの顧客を見つけられたものの、顧客側に受け入れ準備などの時間が必要であることから、1974年の収入増に結びつけることはできなかった。
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