「3D XPointメモリ」は、2つの点で半導体業界とストレージ業界の注目を集めた。1つは、大手半導体ベンダーであるIntelとMicron Technologyが共同開発したこと。もう1つは、原理的には記憶容量当たりのコストがDRAMよりも低くなることである。
後者について補足すると、記憶容量当たりのコストは記憶密度で決まる、とされる。製造歩留まりが100%で、なおかつ開発コストを無視してランニングコストだけを考えた場合である。3D XPointメモリの記憶密度はNANDフラッシュメモリよりは低いものの、DRAMよりも高い。これはDRAMよりも大きな容量のメモリ、あるいはストレージを、DRAMよりも低いコストで実現できることを意味する。
そして3D XPointメモリのデータ読み書き性能は、DRAMよりは低いものの、NANDフラッシュメモリよりもはるかに高い。データの書き換えがひんぱんに発生する用途では、NANDフラッシュメモリよりも3D XPointメモリが優位に立つ。
これらの特長からメモリおよびストレージの階層では、DRAMとNANDフラッシュメモリ(SSD)のちょうど中間に3D XPointメモリが位置付けられる。この位置付けは3D XPointメモリに限らず、クロスポイントメモリ全体に当てはまる。
将来が期待される「3D XPointメモリ」の現状はどうか。Handy氏は講演で、製品化の現状と3D XPointメモリのあるべき姿を論じた。
3D XPointメモリは当初、ストレージ用で製品化された。HDDのキャッシュ用ストレージや、SSDなどである。Intelはストレージ用に続いて、サーバやPCなどの主記憶(メインメモリ)用3D XPointメモリを製品化することを、早くから表明していた。主記憶用DRAMと同様に、メモリモジュール(DIMM)として提供する。当初の予定通りであれば、2018年の段階で既に、3D XPointメモリのDIMMは出荷されているはずだった。しかし実際には開発が遅れている。生産開始は2019年にずれ込んだとみられる。
3D XPointメモリが抱える問題は他にもある。生産規模がまだ少ないことと、生産ラインが止まっているというウワサが絶えないことだ。生産規模が少ないため、製造コストは実際にはDRAMよりも高いままである。そしてIntelは、3D XPointメモリをコスト割れの価格で供給しているとみられる。製造コストをDRAMよりも低い水準に下げるためには、DRAMの10%近い規模の生産数量が必要だと、Handy氏は指摘する。
(次回へ続く)
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