それでは、今回のコラムの内容をまとめてみたいと思います。
【1】政府が主導する「働き方改革」の項目の一つである、「外国人活用」に関して、昨年(2018年)12月に成立した、「改正入管法」をベースに、我が国の新しい外国人活用の方向性について検討を行いました。
【2】まず「外国人労働者」の定義を明確にした後、その種類と人数(人口)を明らかにしました。さらに、ここ10年くらいの間で、80万人ほど増加している一方で、日本の人口が150万人ほど減少していることと、今後さらに劇的に悪化することを示しました。
【3】かつて、外国人労働者の負の面の一つであった「不法就労者数」が激減している事実をデータで示しました。その背景には、厳しい摘発に加えて、「日本はもう魅力のある労働市場と見られてはいないのではないか」という江端仮説とその根拠を説明しました。
【4】「改正入管法」によって新設された、「特定技能1号」「特定技能2号」が、緻密に計算された、『日本人の、日本人による、日本人の為の、外国人労働者の労働力の搾取戦略』であることを、各種の検証作業で明らかにしました。
【5】政府方針の数値や、その他の推測値を使って、シミュレーションを行い、実際の「特定技能1号」「特定技能2号」による外国人労働力の確保数数の予測を行いました。
【6】しかし、これらの新制度を導入したとしても、日本の少子化のスピードには到底追い付けないこと、また、これらの新制度を使ってくれる外国人がどの程度いるのか分からないこと、などの江端の不安要素を挙げました。
以上です。
野党やマスコミのいう「今回の出入国管理法改正案(略称・改正入管法)は、事実上の「移民法」である」 ―― という見解は、私の検討からは出てきませんでした。
もっとも、現時点で運用が確定していない「2号の外国人労働者」の運用の仕方によっては、その可能性がないとは言い切れませんが、現状の私の解釈では
「移民(のようなもの)」を餌にした、狡猾(こうかつ)な、外国人労働者の労働力搾取戦略 ―― ブラック国家戦略
と読み取りました。
人道的、国際社会との調和を放り捨て、周辺国の労働力を吸い上げて、ひたすら我が国の国益だけを追求しようとする、なにふり構わない日本国政府の姿勢には、敬意を払います(今回に関しては、イヤミではありません)
ただ、あんまり露骨な国益戦略を取ると、100年単位で周辺国から恨まれ続けるという経験を、我が国は知り尽しているはずです。実際に、1945年から今に至るまで、我が国は、アジア各国に対して、謝罪巡業を繰り返させられる目にあっております。
私は中学生の頃に、
―― 本当に、面倒くさいものを残してくれやがったなぁ
とウンザリした気分になったことを覚えています。
学生のころ、1カ月間ほど大陸を一人旅していた時のこと、上海発ウルムチ行きの列車の中で、「あの駅」に近づいてきた時に、「あの事件のことを知っているか? どう思うか?」という質問責めにあった時も、同じ気分になりました。
もちろん、私たちは当時の時代背景(帝国主義の流行、占領政策の日常化、外交戦略としての武力行使(これは今でもそうだが))などを勘案しなければなりませんが、あのウンザリ感は、今なお、私だけではなく、我が国全体を覆い尽す負のオーラのままです。
今回の、この「ブラック国家戦略」が、1930年頃と同じ道を歩むとは思えませんが、100年後にどういう価値観や社会通念が登場するかなど、誰にも分かりません。
私たち日本人は、「やりだすと、トコトンまでやりたくなる」という困った気質があると思っています。
今回の、新しい外国人労働力に関する施策も、後世の子孫たちに、「本当に、いらんことしやがって」と言われないように、ほどほどにやっていくことが肝要でしょう。
もっとも、そうも言ってられないほど、我が国が本当にヤバイ状態にあることも、よく分かってはいますけど。
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