EETJ Micronにとって3D XPointはどのような立ち位置なのでしょうか。
Sadana氏 DRAMもNANDフラッシュも持っている当社にとって、3D XPointは、ちょうどこれらの中間に位置する技術となる。3D XPointは、DRAMほど高速ではないが、DRAMよりも高密度で不揮発性である。NANDフラッシュよりも高速であるが、NANDフラッシュほどは安価ではない。
当社のユーザー事例などを見てみると、プロセッサに接続する連想メモリの容量を拡張するために3D XPointを採用しているようだ。ご存じのように、PCでもサーバでも、システムの性能を大幅に向上するには、プロセッサの性能を向上することも重要だが、それ以上にメモリ/ストレージの容量を増やすことも重要になる。
例えばサーバでは、プロセッサに接続できるDRAMの数が不足している。そこで、より多くのDRAMに接続するためだけに、新しいサーバを購入しなければならない状況になっている。プロセッサが接続できるメモリの容量が増えれば、システムの性能を大幅に向上できる。そこに3D XPointを導入すれば、DRAMに比べてより安価に性能を向上できるようになる。
EETJ 機械学習、深層学習といったAI(人工知能)の分野では、どのようなメモリ技術、メモリアーキテクチャが必要になってくるのでしょうか。
Sadana氏 機械学習について、特に学習では、膨大な量のデータがシステムに入力される。つまり、先ほど話したように、ここでも、メモリ帯域幅を上げることが学習システムの性能を向上する鍵になる。そこで、機械学習に最適化されたHBM(高帯域メモリ)が注目されている。HBMの他、グラフィックスメモリを使うという方法もある。HBMもグラフィックスメモリも、PCなどで使われるメモリに比べて帯域が非常に広い。Micronは、グラフィックスメモリでも高いシェアを誇っている。
EETJ 次世代不揮発性メモリにはMRAM(磁気抵抗メモリ)、PCM(相変化メモリ)など幾つかありますが、Micronとしては3D XPointのみに集中するのでしょうか。
Sadana氏 まずは3D XPointに集中したいと考えている。3D XPointは、まだまだ新しいテクノロジーだ。既存のアプリケーションソフトで使われているメモリは、ほぼDRAMかフラッシュメモリで、その“中間”が存在するなど誰も知らない。つまり、3D XPointを有効に使えるOSやアプリケーションソフトウェアも十分に整っていない。そのため、3D XPointの普及には時間がかかる。だからこそ、Micronは(次世代不揮発性メモリとしては)3D XPointのみにフォーカスしなければならないと思っている。
EETJ メモリ市場については、どうお考えですか。2019年は厳しい年になると予測されていますが、2020年以降はどうなるとみていますか。
Sadana氏 予測の通り、NANDフラッシュ、DRAM、両方にとって2019年は厳しい年になるだろう。2017年と2018年は、成長率や利益率の点で、メモリ/ストレージ業界は好調な年だった。当社も、2018年度の売上高は300億米ドルと、前年比で50%増となり、過去最高を達成した。
2019年は、プロセッサの不足や、特にDRAMの過剰在庫など、メモリ市場に影響を及ぼす事態が幾つか発生しているが、そういった状況も2019年後半には少しずつ解消していくとみている。2019年前半に比べれば、需要も上向くだろう。
2020年に関しては、5G対応スマートフォンの市場投入が本格化することもあり、かなり楽観的にみている。5G対応が始まるために買い控えをしているユーザーが購入することが予想されているため、スマートフォンの出荷台数そのものも増加することに加え、端末1台当たりのメモリ容量も増加するだろうから、メモリ市場にとってはかなりの追い風になるだろう。
EETJ 広島など日本の拠点を含め、今後の投資計画について教えてください。
Micron 日本には生産拠点(広島県)も設計拠点(神奈川県、東京都大田区)もあるので、Micronにとって非常に重要な地域だ。クリーンルームを拡張したり、新しいプロセスノードに対応した製造ラインに移行したりと、継続的に投資していく。拠点ごとの投資額は公開していないが、2019年度はMicron全体として約90億米ドルの設備投資を行う予定だ。
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