2018年8月に開催された「フラッシュメモリサミット」から、半導体メモリの技術動向に関する講演の内容を紹介するシリーズ。今回は、次世代メモリが期待される3つの理由のうち、スケーリング(微細化または高密度化)について解説する。
フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベントが、「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」だ。毎年8月に、米国カリフォルニア州サンタクララで開催される。FMSは講演会と展示会で構成されており、来場者は製品や技術、産業などのさまざまな情報を得られる。最近のFMS(2018年8月に開催)で公表された情報の1つに、半導体市場調査会社MKW Venture Consulting, LLCでアナリストを務めるMark Webb氏が「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで述べた、半導体メモリの技術動向に関する解説がある。その内容が興味深かったので、講演の概要を前回から、シリーズでお届けしている。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回では、現行世代の事例としてDRAMとNANDフラッシュメモリを挙げ、次世代メモリの事例としてMRAM(磁気抵抗メモリ)、3D XPointメモリ(スリーディークロスポイントメモリ)、ReRAM(抵抗変化メモリ)、NRAM(カーボンナノチューブメモリ)、「そのほかのメモリ」を挙げてそれぞれのメモリの特徴を5点法(5点が最も優れている)で採点した。そして採点結果を一覧表で示していた。
今回は、Webb氏が次世代メモリ(New Memories)に期待する理由を説明したところから、始めよう。期待する理由は主に3つある。1つは、現行世代のメモリ(DRAMとNANDフラッシュメモリ)のスケーリング(微細化あるいは高密度化)が将来、止まる可能性があること。もう1つは、現行世代のメモリが、速度と品質の点で市場のニーズと合致しなくなってきていること。3番目は、1種類の理想的なメモリ技術で全てをまかなえる、いわゆる「ユニバーサルメモリ(Universal Memory)」が欲しがられていることだとする。
Webb氏は続いて、現行世代メモリの代表であるNANDフラッシュメモリのスケーリングについて論じた。NANDフラッシュメモリの3次元化が現実となるよりも、はるか以前の時代には、リソグラフィ技術の微細化によるNANDフラッシュメモリの高密度化は、ずっと限界論にさらされてきた。
例えば2006年には、40nm技術でNANDフラッシュメモリを実現することは、困難だと考えられていた。実際には40nm世代で限界となることはなく、さらに微細化は続いた。しかし微細化の限界が論じられる状況そのものは、基本的には変わらなかった。
微細加工の限界を打ち破ったのが、NANDフラッシュメモリの3次元化技術、すなわち3D NANDフラッシュメモリ技術である。3D NANDフラッシュメモリ技術は、スケーリングの手法そのものを根本から変革した。メモリセルを垂直方向に積層することで、微細化に頼らないスケーリング(高密度化手法)を実現したのだ。この結果、従来のNANDフラッシュメモリ(プレーナー型NANDフラッシュメモリ)における微細加工の限界論は、意味を成さなくなった。
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