抵抗変化メモリ(ReRAM)の製品化動向と製造コスト見通しを紹介する。特に、ReRAMの製品化で大きな役割を果たしているベンチャー企業各社を取り上げたい。
2018年8月に米国シリコンバレーで開催された、フラッシュメモリとその応用製品に関する世界最大のイベント「フラッシュメモリサミット(FMS:Flash Memory Summit)」でMKW Venture Consulting, LLCでアナリストをつとめるMark Webb氏が、「Annual Update on Emerging Memories」のタイトルで講演した半導体メモリ技術に関する分析を、シリーズでご紹介している。
なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
前回は、抵抗変化メモリ(ReRAM)の記憶原理と長所をご説明した。今回は、抵抗変化メモリ(ReRAM)の製品化動向と製造コスト見通しをご紹介しよう。
ReRAMの製品化動向で特徴的なのは、ベンチャー企業の役割が大きいことだ。研究開発の成果が披露される国際学会では半導体大手によるReRAM技術の存在感が少なくないものの、実際の製品では、ベンチャー企業が主役と呼べる状態になっている。以下に、代表的なReRAMベンチャーの製品動向をご報告する。
不揮発性メモリの開発ベンチャーである米国のAdest Technologiesは、「CBRAM(Conductive Bridging RAM)」と呼ぶReRAM技術を開発した。同社はシリアル入出力EEPROM互換のReRAMを「Mavriq」と呼ぶ独自のブランドで販売している。「Mavriq」の記憶容量は32Kビット〜512Kビットである。従来のEEPROMに比べ、書き込みが速いことを特徴とする。
同じく開発ベンチャーである米国のUnity Semiconductorは、2010年に国際学会ISSCCで64Mビットと当時としては大容量のReRAMシリコンダイを発表して半導体メモリの研究開発コミュニティーを驚かせた。2012年6月に同社は、高速メモリインタフェース技術の開発企業である米国のRambusによって買収される(ニュースリリース)。
Rambusは2018年5月に、中国の半導体ベンダーGigaDeviceと合弁で、ReRAMの開発企業「Reliance Memory」を中国に設立したと発表した(ニュースリリース)。Reliance Memoryは埋め込み用途のReRAMを開発し、GigaDeviceを含めた半導体企業に提供していく。GigaDeviceはフラッシュメモリと32ビットマイクロコントローラー(マイコン)のベンダーであり、同社のマイコンにも埋め込みReRAMが近い将来に使われるとみられる。
埋め込みメモリのマクロを中心にライセンス製品を展開しているのが、米国のCrossbarである。2018年5月にはMicrosemiにReRAM技術をライセンス供与した(関連記事:「CrossbarがMicrosemiにReRAMライセンスを供与」)。Crossbarのメモリセル技術には、1個のセル選択トランジスタと1個の抵抗変化記憶素子で構成する従来方式のセルと、1個のセレクタと1個の記憶素子で構成したセルをマトリクス状に並べるクロスポイント方式のセルがある。
米国(登記上の本社所在地はオーストラリア)の4DS Memoryも、ReRAMの開発ベンチャーである。同社は2014年7月にHDD大手のHGSTと大容量ReRAMの共同開発で提携した。そして2016年10月に、40nm世代の製造技術によって高密度なReRAMを開発したと発表した(関連記事:「4DS Memoryが40nmプロセス適用のReRAMを開発」)。また2017年11月には、ベルギーの研究開発専門機関imecと、300mmウエハーのプロセス開発で提携した。製品は、まだ市場に投入されていない模様である。
ベンチャー以外の企業によるReRAMの製品化を代表する半導体メーカーはパナソニックだろう。同社は、2013年7月にReRAMを内蔵する8ビットマイコンを製品化したと発表した(ニュースリリース)。製造技術は180nm世代のCMOSプロセスである。
パナソニックは現在、製造技術を40nm世代のCMOSプロセスに微細化したReRAM技術を、台湾のファウンドリ企業UMCと共同開発している(関連記事:「パナソニックとUMC、40nm ReRAMの共同開発で合意」)。当初の商品化予定は2018年だったものの、実用化のアナウンスはまだない。商品化の時期は2019年以降にずれ込んでいる。
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