富士通研究所は、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができるアーキテクチャ「デジタルアニーラ」を活用し、発電効率に優れた磁気デバイスを設計するための技術を開発した。
富士通研究所は2019年7月、組み合わせ最適化問題を高速に解くことができるアーキテクチャ「デジタルアニーラ」を活用し、発電効率に優れた磁気デバイスを設計するための技術を開発したと発表した。富士通が提供する「デジタルアニーラ」におけるテクニカルサービスの1つとして、2020年度の実用化を目指す。
エネルギーハーベスティング(環境発電)に用いられるデバイスは、永久磁石とコイルにより生じる電磁誘導を利用して、動力と電力の間でエネルギー変換を行う。環境発電デバイスの発電効率を高めるには、磁石の配列を最適化し磁束密度を最大にする必要がある。ただ、平面状(二次元)に配置した磁石は、その組み合わせが膨大で、最適な配列を計算で求めるのは極めて難しかったという。
富士通研究所は今回、北海道大学情報科学研究院の五十嵐一教授との共同研究により、デジタルアニーラを活用して、最適な配列を計算で求める技術を開発した。具体的にはX、Y、Zの各軸に沿い、配向可能な磁石の方向をそれぞれ3ビットの変数で表現した。この変数とビオ・サバール法則を用いて、発生する磁束密度を求めるためのパターンを定め、その上で、特定部分の磁束密度が最大化するよう、目的関数を導入した。
さらに、組み合わせ最適化問題に必要なQUBO(Quadratic Unconstraint Binary Optimization:制限なし二次形式2値変数最適化)形式を用いて解くことができるよう、新たな変数を目的関数に追加した。これにより、平面状の磁石配列を最適化する計算をデジタルアニーラで行うことができるようになったという。
今回の技術を用い、10×10個の二次元磁石配列の最適化計算をシミュレーションした結果、わずか数秒で最適配置の計算が行えることを確認した。しかも、計算結果を用いると従来方式に比べて、磁束密度の大きさを17%、環境発電デバイスの発電効率を16%、それぞれ向上できることが分かった。
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