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MIT、カーボンナノチューブでRISC-Vプロセッサを開発Beyond-Silicon

米Massachusetts Institute of Technology(MIT)の研究グループが、カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタを使った16ビットのRISC-Vマイクロプロセッサの開発に成功したと発表した。業界標準の設計フローとプロセスを適用し、シリコンプロセッサと比べて10倍以上高いエネルギー効率を実現するという。

» 2019年09月13日 09時30分 公開
[Nitin DahadEE Times]

 米Massachusetts Institute of Technology(以下、MIT)の研究グループが、カーボンナノチューブ(CNT)トランジスタを使った16ビットのRISC-Vマイクロプロセッサの開発に成功したと発表した。業界標準の設計フローとプロセスを適用し、シリコンプロセッサと比べて10倍以上高いエネルギー効率を実現するという。

 シリコンは今や、これまでのような微細化を追求できなくなってきたため、シリコンに代わって微細化を実現する“Beyond-Silicon”技術に関するさまざまな研究が進められている。CNFET(カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ)をベースとしたデジタル回路は、エネルギー効率を確実に大幅に高められるというメリットを提供するが、本質的なナノスケール欠陥や、カーボンナノチューブのばらつきを完璧には制御できないため、超大規模な統合システムを実現することは不可能だとされてきた。

 MITの研究グループは今回、英Nature誌に掲載された70ページに及ぶ論文の中で、どのようにこれらの課題を克服して、完全にCNFETをベースとしたBeyond-Siliconマイクロプロセッサを実証するに至ったのかを説明している。米国防高等研究計画局(DARPA)やAnalog Devices、米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)、米空軍研究所(AFRL:Air Force Research Laboratory)などからのサポートを受けたという。

1万4000個以上のCMOS CNFETで

 16ビットマイクロプロセッサは、RISC-V命令セットをベースとし、16ビットデータ/アドレス上で標準的な32ビット命令を実行する。1万4000個以上のCMOS CNFETが組み込まれており、業界標準の設計フローとプロセスを適用して設計、製造するという。研究グループは論文の中で、カーボンナノチューブの作製方法として、ウエハー基板全体という巨視的規模でナノスケール欠陥を克服するためのプロセス/設計技術の組み合わせ方について提示している。

CNFETを使用し製造された16ビットマイクロプロセッサ「RV16X-NANO」の顕微鏡写真。ダイの中央にプロセッサコアがあり、その周囲をテスト回路が囲んでいる (クリックで拡大) 出典:Nature
「RV16X-NANO」(32個)を形成した150mmウエハー (クリックで拡大)

 業界はこれまで、ムーアの法則を追求することによって、2〜3年おきにチップ上により多くのトランジスタを詰め込む小型化を実現し、複雑化する計算を実行してきた。しかしやがて、シリコントランジスタの微細化が終わりを迎え、効率が大幅に低下する時が来る。研究結果によると、CNFETは、シリコンに対して約10倍のエネルギー効率と高速化を実現することが可能だという。しかし、トランジスタを量産するとなると、性能に影響を及ぼすさまざまな欠陥が生じるため、実用化は困難とされてきた。

 今回MITの研究グループが開発した新しい技術は、既存のシリコンチップファウンドリーのプロセス技術を適用することにより、欠陥の発生を大幅に抑え、CNFETの製造を機能的に完全制御することが可能だ。RISC-Vオープンソースチップアーキテクチャをベースとした、CNFETベースのマイクロプロセッサは、フルセットの命令を正確に実行することができる。また、古典的な「Hello, World!」(ハローワールド)プログラムの修正版を実行して、「Hello, World! I am RV16XNano, made from CNT」(=ハローワールド! 私はCNTから作られたRV16XNanoです)と表示させることができたという。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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