GaNパワーデバイスの市場が本格的に立ち上がっている。最初の重要なアプリケーションとなりそうなのが、バッテリーチャージャーだ。
NavitasのGaNソリューション「GaNFast」は、充電システムに適用することで、シリコンコンポーネントを採用した既存品に比べ、最大100倍の高速化と、5倍の高密度化、40%の低消費電力化、20%の製造コスト削減を実現することができるという。このため、スマートフォンの再充電を大幅に高速化することも可能だ。
GaNパワーデバイスを採用した充電器が市場に投入されたのは、AnkerやAukey、RAVpowerなどのメーカーが、アフターマーケットにおいて24〜65Wの充電器を提供した、2018年半ばから後半にかけてのことだ。2019年には、さまざまなアクセサリーが追加投入されるようになり、現在ではSamsung ElectronicsやVerizon、OPPOなどのメーカーもGaN搭載の充電器に対応可能としている。
さまざまなアプリケーションでシリコンからの置き換えが期待されているGaNパワーデバイスだが、バッテリー充電器は最初の量産市場の一つである。現在、電気製品で使われている充電器のほとんどが、シリコントランジスタを採用しており、長年にわたって、効率やサイズなどの面から最も優れたソリューションとされてきた。ただシリコンでは、特に電力密度に関して物理的な限界に達しつつあり、シリコンパワーコンポーネントを搭載したデバイスの小型化も制限されるようになってきた。
5G(第5世代移動通信)対応の大画面スマートフォンやタブレット、ノートPCに対してさらなる高性能化が求められていることを受け、大型化の一途にあるリチウムイオン電池を超高速充電することが可能な、次世代ACアダプター向け市場が誕生した。
シリコンパワーデバイスからGaNへの置き換えが進めば、現在のように大きなACアダプターや何本ものケーブルを持ち運ばなくて済むようになる。スマートフォンやノートPCの充電時間は大幅に縮小され、充電器が驚くほど熱を持ってしまうのも過去の話になるだろう。27〜300Wの範囲のさまざまな種類の充電器やGaN ACアダプターが量産され、スマートフォンからドローンに至るまで幅広い製品を充電できるようになると、モバイル充電器市場は劇的に変化し始めるに違いない。
NavitasのCEOを務めるGene Sheridan氏は、「モバイルデバイスを高速充電したいという要望に応えるには、より大電力が必要になるが、ユーザーは大きなACアダプターを持ち歩きたくはないだろう。スマートフォンの充電に必要な電力は、数年前まではわずか5Wだったが、今やハイエンドのプレミアムスマートフォンでは50Wを上回っている。さらに新型プラットフォームでは最大で120W必要だと聞いている。GaNは、大電力の急速充電を提供しながら、フォームファクターの劇的な小型化と軽量化を実現する、大きなチャンスとなるだろう」と述べている。
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