オハラは、同社のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス「LICGC PW-01」を用いることでリチウムイオン電池の寿命が4倍に向上したと発表した。「長寿命化と性能向上の両立が不可欠な車載用途をはじめ、今後各種用途で需要が増加するとみられるリチウムイオン電池向け固体添加材として、採用に向けた活動を加速していく」としている。
オハラは2020年3月12日、同社のリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス「LICGC PW-01」を用いることでリチウムイオン電池の寿命が4倍に向上した、と発表した。同社は立命館大学の協力のもと、そのメカニズムも解明している。
酸化物系の無機固体電解質であるリチウムイオン伝導性ガラスセラミックス「LICGC」は、オハラが1995年に開発。酸化物系固体電解質のなかでも高いイオン伝導度をもつほか、大気中および水や有機溶剤中で安定かつ不燃性を有する。全固体リチウムイオン電池やリチウム空気電池の固体電解質、リチウム資源回収/精製用選択透過膜として、さまざまな研究開発機関で利用されている。
同社は今回、LICGC PW-01を正極に微量添加したリチウムイオン電池を用い、電池容量劣化が加速的に進む高温環境(60℃)で、電池容量が10%減少するまでの充放電繰り返し回数(サイクル数)を評価した。
その結果、容量維持率が10%容量減少(90%容量維持)に至るまでの充放電回数が、LICGC PW-01未添加の電池と比べ4倍になったという。さらに満充電保存1カ月後の電池容量(V×Ah=Wh)も11%増加したほか、保存前の状態で90%放電となる3.6V到達時の放電容量(Ah)は56%増加。高温暴露や充電する度に進行する正極の劣化を抑制し、電池容量を長持ちさせる効果を確認した、としている。
同社は立命館大の協力のもと、この機能発現のメカニズムも解明した。
電池内の極微量水分(H2O)と電解質塩LiPF6の化学反応により生成される「フッ化水素酸(HF)」が、正極活物質表面を劣化させることは知られているが、LICGC PW-01には、このフッ化水素酸発生を抑える機能があるという。
よって、正極にLICGC PW-01を微量添加することで、正極活物質表面近傍の抵抗層(表面上の皮膜生成、表面付近の組成変化による還元状態)の生成に関与するHFの量を低減し、電池の長寿命化を実現している、と考えられるという。
同社は、LICGC PW-01の正極への微量添加によるリチウムイオン電池の高電流入出力、低温特性などの性能向上効果に、今回見出された長寿命化の効果が加わることで、LICGCTM PW-01は複数の改善効果を発揮する固体添加材となる、と説明。「長寿命化と性能向上の両立が不可欠な車載用途をはじめ、今後各種用途で需要が増加するとみられるリチウムイオン電池向け固体添加材として、採用に向けた活動を加速していく」としている。
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