10Gbit/sは低価格で小型、使いやすいシリアルインタフェースとして、現在でも使用数量が最も多い光トランシーバーである(ただし、ピークは過ぎ、近い将来100Gbit/sが取って代わると予測されている)。
10Gbit/sが注目されたのは、2000年に発足した300-pin MSAで手のひらサイズのトランシーバーが発表されてからである。
このエポックメーキングなMSAは、システムベンダーの主導で行われた。「MSAによるForm Factor」「IEEE802.3によるインタフェース規格」「OIFによる電気インタフェース規格」という、その後引き継がれていく“3種の神器”は、この時に確立された。これはシステムベンダーのリードがあってのことである。その後の急激な技術発展で、あっという間に手のひらから指サイズのForm Factorが次々と提案された。
インパクトを与えたのはVCSEL、DFBとEMLなどの発光とAPD受光のデバイス開発、600Mbit/s、から2.5Gbit/s、10Gbit/sの電気信号を伝送できるPCBの電気配線技術開発、SiGeからCMOS内蔵集積回路の実現である。これらは、小型化や低消費電力化への主要な技術であった。
2000年の300-pin MSAから2002年のXFPまで短期間に規格化は行われたが、実際には技術開発の速度に従ってXENPAK/X2/XPAK、XFPと時系列で製品が市場に供給された。このため、多くの種類のトランシーバーが運用されることとなった。
この激しい技術開発とビジネス競争の結果多くのMSAが作られた。最終的にSFPの高速版であるSFP+に収束されていく。市場規模はSFP+ほどは大きくないがクロック出力のあるXFPがWDM装置などテレコム応用で現在でも使用されている。
SFP+以外の代表的な10Gbit/s MSA
これに関しては規格のリンクと外形写真を示す。
【300pn MSA】
名称通りの300-pinコネクターを使用したz-Pluggable (PCBに垂直に挿抜)のOn-board Optics
*)Specification Documentはこちら
【XENPAK/X2】
データコム用にx-Pluggable(PCBに平行に挿抜)のPanel Pluggableトランシーバー
【XFP】
初めての10Gbit/sシリアルトランシーバー
SFP+ Optical transceiver
データセンターやストレージネットワークではSFP+が大量に使用されている。また、4GモバイルネットワークでもSFP+が使用されている。
SFPを引き継いだ規格であり、SFPであった機械的仕様の曖昧さを特に改善した。機械的仕様は別の規格文書になっており、その中でIPF(Improved Pluggable Formfactor)という名称が使用されている。IPFはほとんどのSFPのケース・コネクターに挿入できるであろうと記述されている。
項目 | 説明 | 備考 |
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標準規格 | 本体:SFF-8431 その他の規格との関係を図20に示す |
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光インタフェース | 2連LCコネクター | 双方向トランシーバーなどでは単LC |
電気インタフェース | 20-pinカードエッジ(SFPと同じ) ピン配置を図21に示す。SFPに比べ4−7と9ピンの名称が変更されている。 |
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機械的仕様 | 製品外形(図22)とケージの規格は別文書。 SFF-8432 |
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管理インタフェース | 2-wire serial interface SFF-8742 |
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製品例 | II-VI(ex-Finisar)の製品例、FIT(ex-Avago)の製品例 | |
SFP+の拡張
2014年にSFP+が16Gbit/s以上に拡張されるときに体系化された。機械的仕様など共通部分はそれぞれ別文書となりモジュール規格に参照される。その体系を図23に示す。拡張時には伝送速度に合わせ、SFP10、SFP16、SFP28と名称がつけられた。現在SFP56が検討されており、今後SFP112の規格が俎上に上がるだろう。拡張されたときにSFP+はSFP10と名称がつけられたが現在でもSFP+が多く使用されている。
各文書を以下に示す。
10Gではあったデータ信号仕様のSFF-8418を参考に上記に示した。その他のデータ速度に関してはOIFのCEI-VSRを参照する。OIFのCEI最新版文書は以下である。56Gまで規格化されており、現在112Gが議論されている。
(次回に続く)
30年以上にわたり、さまざまな光伝送デバイス・モジュールの研究開発などに携わる。光通信分野において、研究、設計、開発、製造、マーケティング、事業戦略に従事した他、事業部長やCTO(最高技術責任者)にも就任。多くの経験とスキルを積み重ねてきた。
日立製作所から米Opnext(オプネクスト)に異動。さらに、Opnextと米Oclaro(オクラロ)の買収合併により、Oclaroに移る。Opnext/Oclaro時代はシリコンバレーに駐在し、エキサイティングな毎日を楽しんだ。
さらに、その時々の日米欧中の先端企業と協働および共創で、新製品の開発や新市場の開拓を行ってきた。関連分野のさまざまな学会や標準化にも幅広く貢献。現在はコンサルタントとして活動中である。
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