東京工業大学の研究グループは、高分子電解質のシャボン玉を用いて、EUV(極端紫外線)を発生させることに成功した。開発した手法は、次世代の6.xnm光源や炭素イオンビーム用のターゲットにも適用することが可能だという。
東京工業大学科学技術創成研究院化学生命科学研究所の長井圭治准教授とクリストファー・マスグレイブ特任助教(現在はユニバーシティ カレッジ ダブリン)、庄司俊太郎大学院生らによる研究グループは2020年4月、高分子電解質のシャボン玉を用いて、EUV(極端紫外線)を発生させることに成功したと発表した。開発した手法は、次世代の6.xnm光源や炭素イオンビーム用のターゲットにも適用することが可能だという。
高強度レーザー光を集めて物質に照射すると、X線などの量子線が高輝度に発生する。この時、レーザーのターゲットとなる材料は、密度が低いほど吸収効率が高い。このため、最先端半導体の製造工程に導入されているリソグラフィ装置向けEUV光源は、液体金属スズにプレパルスを照射して、ターゲットを低密度化させているという。ただ、低密度にする工程での生産性など、課題もあった。
研究グループは今回、シャボン玉に着目した。容易に大量生産できる低密度構造のためだ。具体的には、高分子電解質を界面活性剤として用いたシャボン玉を作製。これを鋳型としてスズナノ粒子を重ね塗りしながら被覆し、レーザーの低密度ターゲットとなるスズ薄膜球を作製した。スズの使用量は、シャボン玉1個当たり4.2ngと極めて少なく、原子数やサイズの制御性も高いという。
乾燥させたスズ薄膜球にネオジムYAGレーザーを照射したところ、波長13.5nmのEUV発光を確認した。発光量も、金属スズにレーザーを照射した場合と同レベルだという。
研究グループは、「デブリ除去などの技術的課題は残るが、開発した低密度スズ薄膜球のターゲットとレーザーを組み合わせることで、コンパクトな13.5nm光源を実現できる。次世代の6.xnm光源やがん治療用の炭素イオンビーム用ターゲットにも展開可能な手法」とみている。
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