米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatt Bryson氏は、「TSMCは2021年に、堅調な回復を遂げていくと予測される。その背景には、AMDなどのファブレスメーカーが現在、Intelから市場シェアを奪い取っているということがある」と述べる。
米国の投資会社であるWedbush Securitiesでシニアバイスプレジデントを務めるMatt Bryson氏は、「TSMCは2021年に、堅調な回復を遂げていくと予測される。その背景には、AMDなどのファブレスメーカーが現在、Intelから市場シェアを奪い取っているということがある」と述べる。
Bryson氏は、2020年4月27日にEE Timesに提供したレポートの中で、「TSMCの主要顧客であるAMDやApple、HiSilicon、NVIDIA、Qualcommなどのファブレスメーカーは現在、市場シェアを拡大し、エンドマーケットにおいて成長を遂げていることから、今後発注量を増加させていくだろう」と述べている。
また同氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「AMDは2019年末の時点で、製品全体の約50%をTSMCで製造するよう変更している。こうした状況は今後も続くとみられるため、AMDは、特にPC/サーバ向けCPU市場において、引き続きシェアを拡大していくだろう」と述べる。
「ファウンドリーは今後、中国が半導体市場での独立を目指していることや、Intelが最新プロセスの立ち上げで苦戦していることなどが後押しとなって、比較的迅速な成長を遂げ、特に最先端プロセス技術の進展を実現できるようになるだろう」(同氏)
Bryson氏は、「現在、AMDでは売上高全体の約50%を占める製品が、TSMCの7nmプロセスで製造されている。2021年までには、ほぼ全てのAMD製品に、TSMCの最先端プロセス技術が適用されるようになるだろう。この先18カ月間で移行していくことにより、TSMCの売上高は約10億米ドル増加する見込みだ」と述べる。
「PC/サーバ市場におけるAMDのシェアは、2022〜2023年にかけて約40%増加するとみられる。IntelからAMDへと市場シェアが移行することで、TSMCの売上高はさらに10億米ドル増加する見込みだ」(同氏)
さらにBryson氏は、「Microsoftとソニーが、それぞれ『Xbox』と『プレイステーション』の新機種の投入を開始するとなれば、AMDのゲームコンソール関連の半導体チップ売上高は、2020年後半には約10億米ドルに達し、2021年にはさらに18億米ドル増加すると予測される。これらのチップには全て、TSMCの7nm+プロセス技術が適用される見込みだ」と述べている。
また同氏はレポートの中で、「中国の半導体設計メーカーは、TSMCの需要全体の約20%を占めており、今後、世界最大のファウンドリーであるTSMCの売上高をけん引する役割を担っていくだろう。SMICなどの中国ファウンドリーは、TSMCに3世代の後れを取っていて、追い付くにはハードルが高過ぎるという問題に直面している状況だ。米国政府はSMICに対し、最先端プロセス技術を適用した製造を実現する上で不可欠なEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置を、ASMLから調達することを禁じている」と述べる。
米国は、中国の半導体市場における成長を阻止すべく、TSMCに対しても、Huaweiの半導体部門であるHiSiliconとの取引を制限する可能性もある。TSMCは、HiSiliconの5G(第5世代移動通信)対応アプリケーションプロセッサ「Kirin 980」を7nmプロセスで製造していて、HiSiliconはTSMCにとってAppleに次ぐ大口顧客だともいわれている。
米国がTSMCのHiSiliconとの取引を制限する可能性は、TSMCにとって短期的にはマイナス要因になると考えられるが、Bryson氏は報告書の中で、「中国は、製造の自給率向上を追求し続けており、米国が輸出を制限したとしても対処できると思われる」と述べている。
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