米国のエレクトロニクス業界では、多くの製品の発売が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で遅れたりキャンセルされたりしていることが明らかになった。
米国のエレクトロニクス業界では、多くの製品の発売が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で遅れたりキャンセルされたりしていることが明らかになった。
これは、電子機器の設計や製造、サプライチェーンサービスのベンダーである米国のSupplyframeが委託実施して2020年5月に発表した市場調査の結果である。同調査は、従業員が500人以上の機器メーカーのサプライチェーン担当マネジャーを対象とし、217人から得た回答を基にしている。
また、米国の市場調査会社であるDimensional Researchが実施した電子部品の調達に関する調査では、COVID-19に起因する世界的なサプライチェーンの混乱によって、部品コストが大きく上昇していることが分かった。
さらに、部品不足による電子製品の再設計も増加している。つまり、製品設計は今、設計サイクルの初期段階で“リスクを回避”しなければならなくなっている。
Supplyframeの創設者でCEO(最高経営責任者)を務めるSteve Flagg氏は、「一般的なハードウェア製品の生涯リスクとコストの80%は、その製品の設計プロセスの段階で決定される。ズレや食い違いは設計プロセスで生じる場合が多いため、企業は、今何が起こっているかを設計段階で検証する必要がある」と指摘している。
製品の遅れだけに気を取られていると、上記の数字はさらに悪化する。Supplyframeの調査では、調査対象のエレクトロニクスメーカーの91%が、「部品調達の問題が、製品発売の遅れを招いた」と回答している。「機器メーカーがパンデミックによる部品不足を克服するには、エンジニアリングと部品調達、サプライヤーを統合しなければならない」と回答したメーカーは、さらに多かった。
また、3分の1以上のメーカーが、「部品全般のコストが上昇している」「部品価格の高騰によって利用できなくなった部品を別の部品に置き換えるために、設計のやり直しを余儀なくされている」と回答している。「顧客の注文に対応できない」という回答も同等数あった。
その上、たとえ製品設計のリスクを回避できたとしても、性能が実証されているベンダーのプロセスを使わずに新規のサプライヤーを採用せざるを得ないなど、ハイリスクな生き残り戦略によって相殺される可能性がある。調査対象の機器メーカーのうち31%は、「セーフティネットなしで操業している」と回答している。また、「顧客の注文に対応するために低品質の部品を使用することを余儀なくされている」という回答もあった。
一方、調査では、COVID-19に関連してストレスを感じたり注意散漫になったりすることで、設計ミスや生産ミスが増加していることも明らかになった。Supplyframeの調査では、エンジニアと部品調達部門の協力の重要性が強調されている。マーケットインテリジェンス(市場戦略情報)や検索エンジン、リアルタイムの在庫ツールなどを活用することで、問題をより簡単に解決することは可能である。
中国や他のアジア地域に部品供給を大きく依存している電子機器メーカーは、明らかに窮地に立たされている。パンデミック後の経済における産業需要に対応するためにサプライチェーンを再構築して規模を拡大できなければ、この状況は変わらないだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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