ポストパンデミックの世界半導体業界は、どのように回復していくのか。これについては、「一致した見解がない」との見方が大半のようだ。
ポストパンデミックの世界半導体業界は、どのように回復していくのか。これについては、「一致した見解がない」との見方が大半のようだ。
その一例として挙げられるのが、半導体製造装置/材料の業界団体であるSEMIが、2020年4月20日に投稿したブログ記事「An Imminent Recovery …or a Deep Recession?(回復間近か、それとも深刻な景気後退か)」で、「今後30日間で、何らかの答えが見つかるだろう」と述べるにとどめたことだ。
別の見方をすれば、5月末までには、「半導体業界はいつ頃から回復し始めるのか」「回復への道筋はどのような形になるのか(V字型、U字型、L字型)」といった点について、何らかの答えを得られるということになる。
SEMIは、「業界団体が公表する購買担当者指数(PMI:Purchasing Managers Index)を見ると、中国半導体メーカーは現在のところ、初期段階における損失を埋め合わせることができたようだ」と指摘している。また、台湾に拠点を置く機器メーカー各社も2020年3月に、対前年比では低迷しながらも回復を遂げているという。
このためSEMIは、「中国と台湾が安定していく中、欧米経済は緩やかに再開していく」という見方をしているようだ。しかし、「1〜2四半期先の世界需要はどうなるのか」という点については、全く触れられていない。
中国に関して注目すべきは、中国が半導体の自給自足を実現するための取り組みを継続的に進めているという点だ。世界最大規模の経済圏である米国と中国が“分断”しつつあることから、中国はこの取り組みを急ピッチで進めている。
中国のファウンドリーSMIC(Semiconductor Manufacturing International Corporation)は、2019年にニューヨーク証券取引所の上場を廃止したため、30億米ドルを超える投資資本を確保すべく、代替となる資金源への移行を進めている。米国EE TimesのAlan Patterson記者が報じたように、アナリストたちは、「中国政府は、HuaweiがTSMCの最先端製造技術へのアクセスを失うことを見越して、SMICを支援するつもりなのではないか」という見解を持っている。SMICは現在、TSMCに3世代分の後れを取っているという状況にある。
他の産業部門に関しては、より明確な見通しが示されているようだ。例えば、米国の市場調査会社Strategy Analyticsによると、高額なGaAs(ガリウムヒ素)ベースのRFコンポーネントは、2020年のスマートフォン出荷台数が21%減少するとの予測から、今後低迷していく見込みだという。携帯電話機市場予測や市場観測筋によれば、GaAsの売上高は約12%減少し、2年連続の縮小傾向となる。
新型コロナウイルスが脆弱な世界サプライチェーンに影響を及ぼし、スマートフォン市場でも弱気な見通しが続く中、Strategy Analyticsは、「他のGaAs用途市場が健闘を見せる可能性がある」と指摘する。同社のアナリストであるEric Higham氏は、2020年5月初めに、「当社の予測では、GaAsデバイスは迅速かつ大幅な回復を遂げる見込みだ」との見解を示している。
また同氏は、「幅広いエレクトロニクス市場や巨大なシリコン半導体市場における不確実性に目を向ければ、化合物半導体市場が今後、より良い方向に発展していくと考えられるのではないだろうか」と付け加えた。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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